■最終目標は宇宙ロケットの発明!?

 まじめで堅実な小雨からすれば、他人と関わろうともせず、機械いじりにしか興味を示さない天晴こそ変人である。

 小雨の「なぜカラクリに夢中になれるのだ?」という疑問に、天晴は幼少時の体験を語って聞かせる。4歳のときに、生まれて初めて異国の蒸気船を見た天晴は、幼心に衝撃を受けたことを明かした。

 同時に、それまでただの水たまりにしか思えなかった海の向こうに、天晴の知らない世界が広がっていることを知り、そのすべてを知りたいと感じたのだという。

「海は知らない国につながっている。空は月につながっている。月は星につながっている」
「誰かがいつか月の向こうへ行くのなら、誰よりも先に俺が行く」

 そう宣言した19歳の天晴の瞳は、子どものような純粋な輝きに満ちあふれていた。

 ちなみに天晴が「月へ行きたい」と思うようになったのは1冊の海外小説がきっかけ。そのタイトルは『FROM THE EARTH TO THE MOON』で、これはSF作家・ジュール・ヴェルヌが19世紀末に発表した『月世界旅行』の英語版である。

 現実とはかけ離れた空想小説に刺激を受け、それを実現しようとするまっすぐな気持ちを持ち合わせる天晴は、冒険譚の主人公向きな一面も持ち合わせていると言えるだろう。

 第1話には、天晴の作ったカラクリ人形が、回転翼で一定時間飛行後、内蔵火薬に引火して爆発するシーンもある。これが仮に多段式ロケットの実験だとしたら、彼は当時最先端のロケット理論を習得していることになるわけで、「月に行く」という天晴の夢の話に一層の説得力が増す。

 それとともに、天晴が創意工夫を凝らしたオリジナルマシン「天晴号」の性能がどれほどのものか、早くレースシーンを見たくもなった。

 大陸横断レースを主題に掲げている本作だが、監督・シリーズ構成・ストーリー原案を手がけるのは、同じP.A.WORKS制作の『TARI TARI』(2012年)で、ほろ苦い青春群像劇を描いた橋本昌和氏だ。おそらく本作も、単純なレース物では終わらないだろう。

 はるか宇宙にまで思いを馳せる天晴の夢が、劇中でどのような描かれ方をするのか注目していきたい。

(ふたまん編集部)

(C)2020 KADOKAWA/P.A.WORKS/天晴製作委員会

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