福満しげゆき×永田カビ対談「薄いエッセイ野郎が、浅瀬でパチャパチャしやがって!」【後編】の画像
エッセイマンガについて語った永田カビ(左)と福満しげゆき
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 3月27日にオープンした双葉社のコミックサイト「webアクション」で、福満しげゆきさん、永田カビさんの新連載がスタート!

『僕の小規模な失敗』で青年時代の鬱屈を、『うちの妻ってどうでしょう?』では家庭生活を生々しく綴ったエッセイマンガの巨頭・福満しげゆきさん。一方、永田カビさんは『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』で話題をさらった同ジャンルの新星だ。

 自分の体験や内面を赤裸々に描く「私小説」ならぬ「私マンガ」の中でも、ひときわガチ度が高い2人が初顔合わせ! 「なぜ我々はみっともない自分をさらけ出してマンガを描くのか」をテーマに、酒を酌み交わしつつ本音で語り合ってもらった。後編では、酔った福満さんがヒートアップ。身を削る苦しみ、ぬるいエッセイマンガ家への怒りを吼えまくる!

※福満しげゆき×永田カビ対談「前編」はコチラ

(取材・文:野本由起)

 

■永田「母親から『悲しくて泣いた』と言われて……」

──自分や家族について描いていて、ネタ切れになることはありませんか? 日頃からインプットを心掛けているんでしょうか。

福満 だいぶ衰えましたね。子どもができると、こんな僕でも子どもをバージョンアップさせることに集中しちゃうんですね。「小学4年生だから、ここらで『カイジ』を読ませよう」とか。気の弱い子なので、世渡りがうまくなってほしいと思って『こち亀』を読ませたり。リアル育成シミュレーションゲームみたいな感じですね。

永田 私も全然できてないんです。こんなにインプットしなくて大丈夫かなと心配になるくらい。映画館が苦手なので、映画も全然観に行かないし。集中力もなくなってきて、本も読まなくて。

福満 もしかしたらある種の充実や成功を得ると、文学に対する欲求が薄れてくるのかもしれませんね。僕だって昔は暗い映画に執着したものですが、今では妻に衣装を着せて楽しんでますからね! そんなの観るわけないじゃないですか。

永田 それはあると思いますね。

──家族のこともマンガに描いていますが、関係に変化はありませんか?

永田 『レズ風俗~』を出したときに、母親から「悲しくて泣いた」と言われて……。それからはなるべくショックを与えないようにしようと思いつつ、変に気を使って描いたら「親に気を使ってる」とネットで叩かれて。もうどうしたらいいんだって感じです。

福満 注目度が高いマンガ家さんはそういうことがありますよね。やっぱり身内に迷惑をかけるとキツいですから。僕も母親の不倫話を描くときは、さすがに妻に相談しましたもん。「ダメに決まってるだろ!」って言われつつも、「じゃあやる!」って描きましたけど。僕が描いたってことを、母が知ってるかどうかも分からないんですよ。気まずくなっちゃって。

永田 母親は「描いたら見せてね」って必ず言うんです。描いている間も「何を描いてるの?」って聞いてくるし、絶対に見せなきゃいけない雰囲気になって。でも見せたら見せたで悲しまれる。父親はマンガを読む習慣がないから、そもそも読めないらしいんですよ。母親が読んで、その不穏な空気を父親が感じ取る。ずっとそんな感じですね。

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