■福満「こっちは全力投球で肩ボロボロだよ!」
──冒頭でおっしゃっていたように、同業のエッセイマンガ家のことも相当意識していますよね。
福満 そうですね。好き嫌いは別として全然甘い、と思っちゃうことが多いですね。浅瀬でパチャパチャやってるだけですから。特に同世代でしのぎを削ってきた人たちが、しょうもねぇふわふわマンガを描いていると寂しいですよね。「あんなに尖ってたのに」って。でも、ふと自分のマンガを見ると、同じような感じなんですよ。はぁ……。その点、永田さんは全く甘さがないですね。
永田 ありがとうございます。
福満 「こんな薄いエッセイ野郎が、浅瀬でパチャパチャしやがって!」と思うことはないですか?
永田 あります! 誰とは言えないですけど……。
福満 エッセイマンガ家は、自分よりも労力が軽いマンガ家を見ると恨んでしまうんですよね。「ずいぶん楽にやってるね、君。こっちは全力投球で肩ボロボロだよ!」みたいな。その点、永田さんには凄みがありますね。自分よりもガチ度が高い人に、初めて会いました。
永田 いやいや。
福満 でも、マンガの印象ほど弱い方ではないんだなと思いましたね。本当は野心とかメラメラ感を持っているわけじゃないですか。マンガでは、多少自分を弱そうに描いてないですか?
永田 あー……多少はあります。
福満 弱い人には、あそこまで凄みのあるマンガは描けませんよ。かと言って「負けんぞ、貴様ら!」と野心をむき出しにしすぎると読者は感情移入できません。難しいところですよね。今はベールで覆ってますけど、永田さんが本来持っている野心や意地をオープンした先に、もう一段階なにかあるかもしれませんね。
永田 あー、なるほど。
福満 僕も繊細な青年で売ってた時代もありました。でも、こういう感じで喋るタイプなので、「それを隠すのはどうなの?」という時期が来たんです。本当はうらやましいです、永田さんみたいに本人とマンガのズレがない人が。僕は自分とマンガのズレに罪の意識を感じて、少しずつ近づけていったんですよ。その結果失敗して、連載がひとつ終わりましたけど。でも、そのチャレンジを僕は「よくやった!」と思ってます。よろしければ、永田さんにも「これはめっちゃ頑張った!」という僕のマンガを読んでほしい!
──その作品は何ですか?
福満 『僕の小規模な生活』の5巻と6巻です。イヤですねー、興奮して「読めー!」なんて言っちゃって。でも、僕もまだ終わったわけじゃありません。もう一花咲かせてやりますよ! 今日ひとつ確認できてよかったのは、永田さんもある種の意地や根性、作家としての「負けたるか!」が基盤になっているとわかったことですね。自分だけがこんなにイライラして、「薄っぺらいエッセイ野郎が!」って吠えてるわけじゃないとわかってよかったです。自分よりガチ度が高い人に会うのは、正直怖かったんですよ。頭おかしいんじゃないかと思って(笑)。でも、本当に会えてよかったです!
永田 こちらこそありがとうございました。
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双葉社「webアクション」では、おふたりに加えて押見修造、鮫島圓、若井ケン、梵辛、RENA、つゆきゆるこ、U-temo、さそうあきら、奥嶋ひろまさ、相原コージ、棚園正一、高橋聖一、瀬崎ナギサなどの新連載、新企画も続々スタート。毎週金曜正午更新。
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■PROFILE
福満しげゆき/ふくみつ・しげゆき
1976年生まれ。97年、雑誌『ガロ』掲載「娘味」でデビュー。『僕の小規模な生活』『うちの妻ってどうでしょう?』『妻に恋する66の方法』などの実録マンガに加え、『就職難!! ゾンビ取りガール』などのストーリーマンガも人気。新刊『妻と僕の小規模な育児』第1巻発売中。
永田カビ/ながた・かび
1987年生まれ。投稿サイト「pixiv」にアップしたレズビアン風俗体験マンガが閲覧数480万を超え、『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』として書籍化。他の著作に『一人交換日記』全2巻。新刊『現実逃避してたらボロボロになった話』発売中。
■作品概要
『ひとくい家族』
福満しげゆき
「うちは貧乏で…ホントに貧乏で…もう…人の肉を食べてました」──。お父さんが失業してからというもの、日々の食事もままならない貧乏一家。食卓に乗るのは、お父さんが獲ってくる人の肉。女子中学生・凛子は「もうこんな肉食べたくない」と抗うけれど……。禁断のストーリーギャグ、開幕!
『迷走戦士・永田カビ』
永田カビ
これまで「パートナー間の愛など存在しない」と信じ込んでいた永田さん。でも、結婚式で幸せそうに笑う友人やツイッターのほっこりエピソードを見ると、どうやら実在するようで……? 一人結婚式、マッチングアプリへの登録──愛し愛される関係に焦がれてもがく、迷走ジタバタコミック。