■小学生の頃からのライフワーク

福山 吉田さんはアナウンサーでありながらも本を書いたり、新しいラジオを作ってみたりと、いろいろなジャンルのプロになりつつありますよね。吉田さんは今何になろうとしてるんですか(笑)。

吉田 僕がここ数年考えているのがまさにそこなんですよね。自分は今なんでこんな感じになっているんだろうと(笑)。でも考えてみると、メディアの仕事って「調べてまとめて伝える」ことで、それって僕が小学生の頃からライフワークとしてやってきたことでもあるんです。

福山 子どもの頃からですか。

吉田 小学1年生の頃から興味のある新聞記事を切り抜いてはスクラップにしていたんです。きっと僕はメディアという仕組みそのものが好きなんですよね。ただ例えばテレビだと“調べる”“まとめる”“伝える”がそれぞれ分担されて、ひとりではできないじゃないですか。だけどラジオであればそれがひとりでもできる。だから僕は、ラジオが好きなんだと思います。

福山 なんとなく分かる気がします。けれど、僕は真逆のタイプかもしれません。

吉田 そうですか?

福山 僕も調べ物は好きですし、人よりも疑問を抱くことが多い子どもではあったんですが、僕はリサーチして伝えるというところにはいかず、自分なりの仮説や推論を立てて、それで満足することが多いんです。思弁的というか、客観的な事実や周囲の意見はどうであれ、僕の中で確証があればそれを結論として採用する。そうやって自分の力で答えを導き出していく行程に喜びを感じるタイプなんです。

吉田 なるほど。それは確かに逆かもしれませんね。僕は疑問に思うとすぐに専門家に会いに行っちゃいますから。つい最近も「しょうがない」っていう気持ちはどこから生まれるんだろうといろいろと調べていたら、どうやら仏教がその答えを持っているらしいということになり、今はお坊さんをブッキングしようと奔走中なんです!

福山 そういう吉田さんの行動力は僕にはないので、昔からすごく尊敬しています。普通のアナウンサーの域を超えていますよね。

吉田 そうかもしれませんけど、僕が考えるメディアの真骨頂というのは、より多くの人にニュースを伝えるということではなく、ニュース源や異分野を交流させることで、本来は生まれない発見や新しい価値を生み出すことだなと思うんです。本質的にやりたいのはそれで、食事会を主催するのもその一環ですし、そもそも僕がアニメを好きなのも根本的には同じ理由なんですよ。

福山 どういうことですか?

吉田 革命的なアニメって、往々にして訳の分からないモチーフを作品に持ち込んでいたりするじゃないですか(笑)。アニメだけを観て育ったクリエイターが作ったアニメって僕はあまり刺さらないんです。そこは富野由悠季監督のイズムに近いと思うんですけど、それこそ福山さんに近いところで言えば谷口悟朗監督もそうですよね。

福山 そうですね。谷口さんはもともとはアニメ畑の人ではないとお聞きしました。その意味では、僕も声優として素晴らしい先輩はたくさんいらっしゃいますけど、その感じを再現したいとは思わないんですね。僕は僕のお芝居を通じて、アニメを観ている人たちに鳥肌を立たせたいという気持ちがいちばんのベースにあるんです。

吉田 それは素晴らしいです。アニメだけを観て育っていると、それってなかなか生まれ得ないですからね。

 ※  ※  ※  ※

 プライベートでも交流のある二人が意外な面を見せてくれた、新連載「福山潤のプロフェッショナルトーク」。現在発売中の『声優MEN』では引き続き、ラジオ論や声優論について語っている。

■福山潤/ふくやま じゅん
11月26日生まれ、大阪府出身。2007年、初代声優アワード主演男優賞。『無敵王トライゼノン』で初主演。代表作に『コードギアス 反逆のルルーシュ』(ルルーシュ・ランペルージ)、『中二病でも恋がしたい!!』(富樫勇太)、『WORKING!』(小鳥遊宗太)、『青の祓魔師』(奥村雪男)、『暗殺教室』(殺せんせー)、『PERSONA5the Animation』(雨宮 蓮)、『真夜中のオカルト公務員』(宮古 新)、『ぼくのとなりに暗黒破壊神がいます。』(小雪 芹)など。近年はアーティストとしても活躍。現在、2ndアルバム『P.o.P -PERS of Persons-』が絶賛発売中。

■吉田尚記/よしだ ひさのり
1975年12月12日生まれ、東京都出身。ニッポン放送アナウンサー。2012年、第49回ギャラクシー賞DJパーソナリティ賞。「マンガ大賞」発起人。バーチャルYouTuber・一翔剣、その他アイドル、落語などにも精通する。ラジオ『ミューコミプラス』〈月~木曜日/24:00~24:58〉(ニッポン放送)他のパーソナリティを務める。著書の『なぜ、この人と話をすると楽になるのか』(太田出版)は13.5万部を超えるベストセラーに。他に『コミュ障で損しない方法38』(日本文芸社)、『没頭力「 なんかつまらない」を解決する技術』(太田出版)など。

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