ファミコン『タッチ』“クソゲー”評価の理由は最悪パスワードにあり!?【ファミコン芸人フジタのコラム】の画像
『CITY ADVENTURE タッチ MYSTERY OF TRIANGLE』(フジタ私物)

 みなさんこんにちはファミコン芸人のフジタです。1959年に創刊された『週刊少年サンデー』(小学館)が60周年を迎えた今年。今回は看板作家のあだち充先生の名作野球漫画を原作としたファミコンソフト『タッチ』について書きたいと思います。

 あだち先生のゲームは、実はかなり貴重。1987年にパソコン・PC-8801シリーズ用に発売され、その同じ年にこのファミコン版『CITY ADVENTURE タッチ MYSTERY OF TRIANGLE』が発売。それ以降1作も作られていないんです。

『CITY ADVENTURE タッチ MYSTERY OF TRIANGLE』より

 当時はアニメを原作としたファミコンソフトがあふれる時代でした。この『タッチ』を機に、あだち充作品のゲームが続々登場するものと思いきや、これで打ち止め。その後一切出なくなったことから、このゲームに関して「あだち充先生が激怒した」「何かいざこざがあった」などと噂の多い作品なんです。ホントのところをあだち充先生本人に、いつかじっくり聞いてみたいです。

 ゲーム内容は、犬のパンチの子どもを捜すべく、異次元を冒険するアクションゲーム。野球ゲームにも青春アドベンチャーゲームにもしないという、あまりに攻めた作品です。原作漫画との共通点は、野球のボールのみ! しかもそのボールは武器にして戦うために使用します。

 異次元という設定そのものがツッコミどころですが、達也と和也と南ちゃんの3人がガイコツや人形や戦車と戦うという本作。ファミコン版『タッチ』は「原作崩壊ゲー」とも言われる悪名高いソフトなんです。

 レトロゲームファンの間では本作は「クソゲー」という評価が定説となっていて、ひねくれた人から「逆に名作」という声も上がってます。結局のところ、どうなのって話なのです。

 そもそも、僕の考えでは、「クソゲー」とジャッジする権利を持つのは、当時定価に近い値段で買った人のみと思っています。ファミコンソフトの当時約5000円という価格は、(割とお金だけはあった)僕クラスの子どもであっても痛い。クソゲーを引かされるとかなり参ったものです。

 5000円を出して買った子どもは、どんなにつまらないゲームであろうとも、なんとか楽しさを見つけようとするものです。まして当時は新しいソフトは月に数本程度しかリリースされていない時代。なんとかそのゲームの中に面白さを見つけようともがいたはず。

 にもかかわらず『タッチ』にはクソゲーという評価が当時からずっと続いているんです。

 まず、原作の『タッチ』はおもしろい。当時の野球漫画といえば『タッチ』。『少年サンデー』といえば『タッチ』でした。1987年はアニメも大ヒットし、あだち充の全盛期と言っても過言ではない状態です。その人気がこのゲームの売れ行きに繋がったと思いますが、ゲームへの期待値は相当上がってしまった。それが逆にプレイヤーをガッカリさせてしまったんでしょう。とはいえ、原作は一切考慮せず、ゲーム内容だけを公平に見ても、当時のゲームを多々見ている僕にとっても、このファミコン『タッチ』は、なかなかなクソゲーと言っても過言ではない内容だったと思います。

 CS番組で13回も続いたバラエティ番組『伝説のクソゲー大決戦~今甦る!記憶に残る迷作たち~』では、紹介できるメーカーに限りがありましたが、「タッチはこうでこうだからクソゲーです!」という僕の思いを、愛と熱意を込めて紹介したかったぐらいです。

 そんなファミコン『タッチ』。まず、何をして良いか分からない! 当時の理不尽さのザ・王道!

 “何をしていいのか分からない度”では『元祖西遊記スーパーモンキー大冒険』が、トップクラスではありますが『タッチ』も同等クラス。開始直後から! 何をしていいかひたすら分からない!

いきなり路上にほっぽり出されます。

『ドラクエ』ほどの親切さまでは要求しませんが、少なくとも、東西南北、森町、どのあたりに行って何をするぐらいの情報は示してほしかった。

 さらにゲームの難易度がひたすら高いこともポイントです。たつや、かずや、みなみが3人同時に動き、攻撃できない逃げるだけの「みなみ」までダメージを受けてしまうんです。何をしていいのか分からないところを、さらにそれすら考える余地もないほど襲いかかる敵の大群! この鬼ムズ具合はやりすぎでしょう。

敵に攻撃されるたび南が泣き出してしまう。

 そして、このゲームでの「HP」という概念は「お金」です。ですので、ショップなどで限界まで買い物してしまうと、HPがまったく無くなり一発で即死してしまうんです。斬新というか、攻めまくった設定でした。「金は命と同等」という斬新なメッセージが込められていたのかもしれません。

 ゲーム道中では、入れるドアを総当たりで探し、ボスに有効なアイテムを探し、ボスを探すといった具合。謎解き要素もあるアクションで、名作『ゼルダの伝説』風でもあるのですが、ノーヒント過ぎるのがよくない。ボスに人形を投げつけるのが正解だったり、同じような風景の広大なマップが続く、死ぬほど難しいかつ理不尽なゲームです。

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