■ポケモンが変えたゲーム市場

 結果的に「ポケットモンスター緑・赤」は800万本以上を売りあげる超絶ヒット作品となった。この成功はゲーム業界に多大な影響を与え、本作発売当時はリリース予定タイトルが3本程度しかなかったというゲームボーイ市場だが、「緑・赤」のヒット後、雨後の筍のように同じようなコンセプトの「ポケモン」フォロワーが各メーカーから大量に発売され、ゲームボーイ市場はまさかの完全復活を遂げた。子供たちは息を吹き返したゲームボーイのゲームソフトに注目するようになり、「メダロット」「真・女神転生デビルチルドレン」など「ポケモン」フォロワーの中から、ヒット作もいくつか出るようになった。その後ゲームボーイは、小型化しカラーバリエーションを増やした「ゲームボーイポケット」、ゲーム画面がカラーになる「ゲームボーイカラー」とハードそのものをバージョンアップさせる一方で、子供たちが興味を引きそうな周辺機器も続々と登場するようになっていく。

 また、ゲームボーイ復活に伴い再び携帯ゲーム機市場に活気が戻ってくると、「ネオジオポケット」(SNK)、「ワンダースワン」(バンダイ)といった携帯ゲーム機が他社からも発売されるに至った。結論から言って、「ポケモン」はゲームボーイ市場を変えたのみならず、20世紀末のゲーム業界に多大な影響を及ぼしたと言える。その影響力は、単にゲームの大ヒットのおかげでフォロワーを生んだ、というレベルにとどまらず、ゲームボーイの独壇場だった携帯ゲーム機市場に新興勢力を生み出すまでに至っていたのだ。

 ハード発売から7年。3年経てば後継機の噂が流れ始めていた当時のゲーム業界からしたら、非常に異例な展開である。それだけのポテンシャルを秘めていたゲームボーイは、やはり歴史的な名ハードだったということだろう。

 ともあれ1996年にセカンドバースデーを迎えたゲームボーイは、再び携帯ゲーム業界をけん引するトップランナーとして走り始めた。

※本記事は『EX大衆』19年6月号の企画を再構成したものです。

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