──SF的な仕掛けを使いながら、物語自体はハルヒを中心としたミニマムな世界観というのが本作の特徴ですね。大きな物語を喪失したあとのSFの象徴というか。

藤田 小松左京的な、日本がどうとか、人類の命運がどうとか、人間の進歩の意味のような、壮大でこってりしたテーマとは違う、ガジェットとしてSFが使われていますよね。要するに「ハルヒ」って、ハルヒが無茶苦茶なことをして面倒くさい世界と、そうじゃない普通の世界、どっちを選ぶかキョンが迫られた時に、実は非日常のほうが好きでした、と告白するみたいな話じゃないですか。「あなたはどういう現実を選ぶのか?」「日常と非日常の関係をベストと思いますか?」という問いに対する、葛藤の表現なわけです。問題が内面化しているこの表現は、現代のSFの特徴なのかもしれません。

――SFって時代によって使われ方が変わっていくわけですね。

藤田 高度成長期における想像力ではなく、成長しない社会でどう生きていったらいいのかという想像力ですね。仲間内で戯れたり、バンドをすればいいじゃないか、といったノリが空気系や日常系アニメになって、現在の若者の状況につながってるんだと思いますし、「ハルヒ」はちょうどその転換期の作品だと思います。これはSFも同様で、宇宙や人類の壮大な話とかはほぼ書かれなくなって、「人間とは何か」とか「人間とコンピューターの関係」といった小さな、自閉的なテーマに傾倒していた時期でもあります。僕は、社会の状況との関係もあったと思います。この頃からエンターテインメントは、自分の心の話や家族とか共同体の話が多くなっていきます。そういった面では、オリンピック後の日本が描かれるというアニメ「日本沈没2020」は非常に興味深い作品になるだろうなと思っています。

※本記事は『EX大衆』2019年12月号の企画を再構成したものです。

PROFILE ふじたなおや。日本映画大学専任講師。編著に『東日本大震災後文学論』『地域アート』震災文芸誌『ららほら』等。単著に『新世紀ゾンビ論』『虚構内存在』『シン・ゴジラ論』『娯楽としての炎上 ポストトゥルース時代のミステリ』がある。

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