■丸一日、ひと言もしゃべらない撮影日もあった
――演技に関して、白石監督から何か指導は受けましたか?
閻魔あいは物語の真ん中にいるキャラクターですけど、実はセリフも動きもないシーンが多くて、ただ後ろにいるだけのカットとか、丸一日ひと言もしゃべらない撮影日もあったりしたんです(笑)。でも、そこが私が脚本の時点からすごく面白いなと思ったところで、彼女はほんの少し動いただけで見え方が変わってしまうキャラクターでもあるんです。少しの角度の変化で意思が伝わってしまう。そういう部分について、白石監督には「ちょっとだけ首をこうして」みたいな、他の作品では言われないような細かい指示をいただきましたね。
――予告映像では赤く染まった教室で「あぶくたった」を口ずさむシーンがありました。閻魔あいというと、童謡も彼女を印象深くする1つです。透明感とも不気味とも違う異質な声を出すうえで意識したことは?
あれ、すごく難しくて。閻魔あいの声って、声量が出せないんですよ。こう、お腹をへこませて、胃からというか、内臓から声を出すしかないんです。それに、童謡ってリズムも難しくて、音も急に高くなったりするじゃないですか。初めて聴く童謡もあったので、現場でテンポをなかなか合わせられずに苦労しました。
――決めゼリフ「いっぺん、死んでみる?」の尻上がりのイントネーションはアニメを参考にされたということですね。
そうなんです。アニメ版を何度も見直して参考にさせていただきました。自分なりにトーンを変えた「死んでみる?」を自宅で何パターンも録音して、それを聴き返しながら練習して……。
実は「死んでみる?」の言い方も、相手によっても少しずつニュアンスを変えているんですよ。人に対してのやるせなさや、怒りとか憤りとかのいろいろな感情を、相手によって少しだけ足したり引いたりしていて、気づくか気づかないかくらいの本当に微妙な違いなんですけど、ぜひ注目してもらいたいですね。
■原作ファンは意識して。でも寄り添いすぎず
――今回の『地獄少女』のほか、『チワワちゃん』『惡の華』など漫画原作作品でのヒロインが続いています。それらの役を演じるうえで、どのようなことを考えられていますか?
役者さんによっても違うと思いますが、私は必ず原作に目を通すことにしています。そこから作品の意図を読み取りたいと思っていて、役に入るための必要なステップとして漫画をとことん読み込みますね。
――それは原作ファンを意識してのことですか?
そこはやっぱり意識しちゃいますね。ただ、実写化作品は原作ファンにだけ届けるものでもないというのは考えていて、ファンの期待にだけ100パーセント寄り添うのも違うと思っているんです。実写化によって、「『地獄少女』って漫画だったんだ」「アニメにもなってるんだ」っていうふうに新しく出会う人もいるだろうし、原作のファンの人にも「こういう解釈があるんだ」って思ってほしくて、いろいろな方に響くものにしたいですから。
――役になりきる際に、私生活から役に近づけていく役者さんもいます。玉城さんは普段の生活が閻魔あいに影響されることはありましたか?
いえ。私は切り替えタイプのほうですね。撮影に入って切り替わり、現場を出たあとは引きずらない。もちろん家で本読みをするときは閻魔あいの声になりますけど、移動中とかは逆にあまり考えすぎず、現場で衣装を着てメイクをしていく段階で徐々に出来上がっていくタイプです。今回の閻魔あいは特に感情面ではフラットなキャラクターなので、普段の自分が影響されて揺れ動いたりすることはなかったですね。