「描いてみたいのはゲイ同士の話で完結するのではなく、個人のゲイと社会が関わる間で産まれてくるドラマ」

【以下のムービーは、田亀先生が招かれたロンドンでのトークショーの様子。先生自ら『僕らの色彩』について語っています】

https://youtu.be/6lO58419fgQ

現在、月刊アクションにて連載中の『僕らの色彩』

――さて、今度は新作の『僕らの色彩』についてお聞きしたいんですが、今作に込められたメッセージとはどんなものなのでしょうか?

(『僕らの色彩』とは:周りにゲイであることを秘密にしている男子高校生と、彼を取り巻く人々が織りなす青春ドラマを描いた作品)

「日本のマンガに見られるゲイ表現というのは、ボーイズラブに代表されるように、ほとんどがロマンスやセクシャルなファンタジーを描いたものです。私もそれはそれで読者として楽しく読んでいるんですが、ただ、そればっかりに偏ってるのが不満だったんですね。

 そこで『弟の夫』では、ロマンスではないカタチでゲイについて描き、ヘテロ(異性愛)読者向けに描いてみたいな、という思いがありました。

 そこで今回の『僕らの色彩』では、『弟の夫』ほど明確にヘテロ読者を意識することなく、ゲイの少年を主人公にして、読者に共感していただいたり、巻き込んでいけたら面白いな、という考えで執筆し始めました。

 根っこにある“恋愛や性行為で消費されるのではないゲイの物語”というテーマは2作とも共通しているので、私の中では姉妹作という位置づけです。

 内容としてはゲイの高校生男子の日常生活を描いています。最近ではそれほどゲイであることをうしろめたく思うことのない時代にはなってきていると思うんですが、ごく自然にオープンにできるかというと、まだそこまでの社会にはなっていないですよね。

 その“オープンにできない人間”を描くことで、同じように悩んでいる人たちにはリーチ(伝達し広げる)して欲しいし、また逆に身近にもオープンにできない人がいるんじゃないか、あなたの子供がそうなんじゃないか、というような想像力を、非当事者には持ってほしいと思っています。

 私が描いてみたいのはゲイ同士の話で完結するのではなく、個人のゲイと社会が関わる間で産まれてくるドラマなんです。今までフィクションではあまり読んだことがなく、私自身も読んでみたいと思っているので、自分で描いてみようと思いました」

――『僕らの色彩』はコミックス1巻が発売中ですが、最初から胸に迫る展開が続いて目が離せない作品となっています。最後にもう一つお伺いしたいんですが、先生が作家活動を始められてからの約30年間で、ゲイと社会の関係はどのように変わってきたとお考えでしょうか?

「30年のうちの20年はあまり変わっていなくて、ここ10年くらいの間にものすごいスピードで変わったという印象です。

 理由としては、ここ10年くらいで同性婚の合法化というのが世界中からニュースとして流れてくるようになったということと、並行して“LGBT”という言葉が一気に脚光を浴びるようになったということがあると思います。

 それはようやくセクシャルマイノリティの存在や権利というものが目に見えるようになってきたということで、それによって男性同士の恋愛を描いたドラマが人気を博したりしていると思います。

 でも、そういったフィクションやニュースの中ではなく、日常レベルでどれだけ顕在化しているかといえば、まだまだだなと思っています。

 例えば街行く人に『ゲイやレズビアンの友達はいますか?』と聞いたときに、数年前の調査では、日本は韓国と並んで6%という圧倒的に低い数字でした。これが欧米の先進国ではだいたい3割から5割を超えてくるんです。

 ただ一つ私が期待したいのは、“LGBT”という言葉の広がりや、テレビドラマで男性同士のラブシーンが流れることでもいいんですが、そういうことから社会の中でゲイの存在があたりまえのものになってくることによって、若い世代がそういうことに後ろめたさを感じなくなっていってくれることです。

 でも、そういう変化はいきなり進んでいくものではないので、焦ってはいけないと思っていて、私が『弟の夫』や『僕らの色彩』を描いているのも、これらの作品を読んだ人達が次のステップに踏み出してくれることを期待しているから、というところがあるんですよね」

 そしてここでもう1つスペシャルニュースが……

 双葉社オンラインストアにて、なんと田亀源五郎先生の複製原画の通信販売を開始!

 イラストはカラー・モノクロすべて、これまで展示会で販売したものとは異なる絵柄となっており、またモノクロ原稿については大英博物館で展示されているものと同じものを購入することができます。

 完全限定生産の複製原画を手に入れる貴重なチャンスをお見逃しなく!!

<ご注文方法>
■お申し込みは『双葉社オンラインストア』 (https://ec.futabasha.co.jp/item_List.php?@ps@=none&cat=15)にて承ります。

 さらに大英博物館での展示を記念し、Kindleでは『弟の夫』1巻を税込100円、『僕らの色彩』1巻を300円(半額・税抜き)と、6月9日までの限定割引実施!

 また、『弟の夫』1巻は今ならKindle Unlimitedで読むことが出来ます。このチャンスに是非ご一読下さい!

田亀源五郎(たがめ・げんごろう)

マンガ家/ゲイ・エロティック・アーティスト。1964年生まれ。
多摩美術大学卒業後、アート・ディレクターをしつつ、1986年よりゲイ雑誌にマンガ、イラストレーション、小説等を発表。1994年から専業作家となり、ゲイ雑誌『G-men』(ジープロジェクト)の企画・創刊にも協力(2006年に離脱)。同時に、日本の過去のゲイ・エロティック・アートの研究、およびその再評価活動を開始。また、フランス、アメリカ、イギリス、ドイツなどのゲイ・メディアでも活動開始。アーティストとしてはパリ個展やニューヨーク個展を始め、フランス、アメリカ、スペイン、イタリア、オーストラリア、カナダなど企画展への招聘参加や、アメリカ、イギリス、ドイツなどのアートブックへの作品掲載も多数。
オフィシャル・サイト:http://www.tagame.org/

  1. 1
  2. 2
  3. 3
全ての写真を見る