■「推し」の乙嫁を見つけるのも楽しい

 ではその後、この物語は何処に向かっていくのか。そこで登場するのが、中央ユーラシアを調査・研究に訪れているスミスというイギリス人青年。物語の冒頭ではカルルクたちの家に居候しており、その後、次の目的地へと旅立っていく彼の旅が本作のもう一つの軸なのだ。

 彼のそこに暮らす人々の風習などを追及する知的好奇心は、舞台が変わっていっても我々読者をこの世界に引きずり込んでくれる。アミルたちの物語がひと段落すると、今度は彼の旅に同行しながら様々な「乙嫁」たちと出会うことになる。その面々は、過酷な過去を持つ未亡人であったり、まだ子どもっぽさが残る双子の姉妹であったり……。アミルとはまた違った魅力的な乙嫁たちが登場し、美しく、そしてにぎやかな物語が紡がれていく。自分の中で「推し」の乙嫁を見つけるのもこの作品の楽しみ方かもしれない。

『乙嫁語り』は現在11巻まで発売されている。休日などに一気読みし、中央ユーラシアに旅立ってみてはいかがだろうか。

(文/がまあぶら寝太郎TX)

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