■中山美穂や佐々木蔵之介でドラマ化された『黄昏流星群』

 島が現実離れしたモテっぷりを発揮する一方で、『黄昏流星群』では、必ずしも成功しない中高年のリアルな恋愛事情が描かれている。

「相手を好き過ぎてってことが、男にはありますからね。でも、好きでもない相手とはデキちゃったり……。そうした、誰でも経験があるだろうエピソードを盛り込んでます。もともと、『黄昏流星群』は自分と同世代に向けて描き始めました。それに、自分がこうだったらいいなという“妄想”もストーリーに生かしています。だから私が50代、60代と年を取るごとに、主人公の年齢も比例している。今は私が70代なので、年寄りの恋愛を描いていますが、もちろん、80代でも続けたいですね。

 昔は年寄りの恋愛が珍しかったでしょうが、今は“人生100年時代”。まだまだ元気な人も多いですから、“年寄りでも、まだ恋愛できるぞ!”という希望を与えたいと思っています。ですが、“恋愛の形”って世の中で、もう描き尽くされてしまっているんですよ。でも、読んだ人をビックリさせたい。だから、少し前には、おばあちゃんの世話が恋愛に発展するという話を描きました。原稿を受け取った編集部が騒然としたそうです(笑)」

 仕事に恋愛に邁進する、弘兼作品の登場人物たち。彼らがイキイキと人生を謳歌できるのは、弘兼氏自身が、立ち止まることなくエネルギッシュに生きているからにほかならない。

「今は、『島耕作』の新たな題材として、国際リニアコライダーについて描いています。政府と財界が、世界中の量子学者を日本に集めて、岩手県にシリコンバレーのような新たな都市を作るという計画を立てており、その取材もしてきました。そういった現実社会の最新技術から、社会問題や事件まで、常にアンテナを張っています。いつも“ネタになるのでは”と考えながら世の中を見て、ネタになると思ったら一気に調べて描く、というやり方です。現在72歳ですが、幸い健康上の問題点はありません。だから『島耕作』に終わりがあるならば、“自分が描けなくなったとき”です。それまでは、たとえば自分が入院したら、“入院島耕作”を描くかもしれませんね(笑)」

 島耕作流、いや、弘兼憲史流の生き方を見習うべし!

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