まさかの、しんちゃんが出てこない回――。ダウ90000の蓮見翔さんが脚本を手掛けた、アニメ『クレヨンしんちゃん』の9月19日放送回「ある午後の野原夫婦だゾ」が話題となった。突飛な設定にも映るこの作品は、いかにして生まれたのか。本作を演出した平井峰太郎氏、プロデューサーの國安真一氏に話を聞いた。
――この企画自体は、テレビ朝日からシンエイ動画へ提案があったのでしょうか?
國安 そうですね。お話をいただいて「蓮見さんが書く『クレヨンしんちゃん』を観たい」と思いました。もともと蓮見さんが好きだったんです。
――どんなところが好きなんですか?
國安 蓮見さんの作品は会話の展開に面白さがあって、「あー、そこを突いてくるんだ!」という気持ちよさがあるなと思うんです。
――平井さんはどう受け止めましたか?
平井 企画を聞いたときは、正直に申しまして蓮見さんもダウ90000も存じ上げていなかったので、YouTubeに上がっているコントを何本か観たんです。これが面白かったのですが、「……どうやって『クレヨンしんちゃん』に落とし込むんだろう」と、あがってくる脚本が想像できませんでした。
――これまで別ジャンルの方が脚本を書くケースはありましたか?
國安 作家の雨穴さんとコラボした「変な家族だゾ」が放送されたことがあります(2024年8月31日)。雨穴さんも蓮見さんも、作品のクセや雰囲気が見えていたので、面白くなるんじゃないかと思いました。
――本作の制作現場を追った『バズマンTV』(9月18日放送/テレビ朝日)では、平井さんは蓮見さんの脚本を読んで「本当にやるの?」と思ったそうですが。
平井 そうですね(笑)。
――そう思ったのは「主人公のしんのすけが出ないから」なのか、他の理由ですか?
平井 過去にはひろしをフィーチャーした回もあるので、「しんちゃんがいない」ことに抵抗はなくて。ひろしとみさえが会話しているだけで、そのやり取りの面白さを見せることに「本当にやるの?」と思ったんです。
通常回でも言葉で笑わせることはあるけど、どちらかというと「そうともゆー。薄口しょうゆー」みたいなギャグなわけで(笑)。会話や視点で笑わせるコメディのような回は、やっているようでやっていなかったんです。しかも、ひろしとみさえだけで7分、8分ですから。正直、制作スタッフとは「子どもはわからないかもしれない」という話にもなりました。ただ、誰しもがわかるようにしてしまうと、脚本の良さが消えてしまうジレンマがあって。
――「わからないけど、何か面白そう」「大人はこういう話をしているのかな」と受け止める子どもも多いと思います。
平井 そうなんです。もちろん「子どもだから」と侮ることはなくて。理解できなくても何かを感じてくれると思っています。
――ワンカットで撮ることは蓮見さんからの指定ではなく、制作スタッフからの提案だったとか。
平井 そうですね。誰の発案かは覚えてませんが、制作チームからの提案だったと思います。


