■甘やかしたツケが鬼を生む…『大介夢幻抄シリーズ』
最後に紹介するのが、オカルト・ルポライター早乙女大介の活躍を描く短編シリーズ『大介夢幻抄』。そのなかで個人的に一番ゾッとしたのが、第2話「鬼の棲む家」だ。
大きな一軒家に住む老人、大竹市子が孤独死する。唯一の身内である孫の道彦は、10年前に殺人事件を起こして消息不明になっていた。
彼女の遺書を読んだ大介は、古い家を残すという市子の考えに疑問を抱く。一方、雑誌編集者の加山みゆきは、ルームメイトの宮川多枝子とともに、無人になった大竹邸を格安で借りることになる。
だが、その大竹邸では冷蔵庫から食材が消えたり、人がはいずりまわるような物音がしたりと、不気味な現象が続いた。
その後、多枝子は刑事から道彦が起こした事件の話を聞く。両親を事故で亡くした道彦は、市子に甘やかされて育った。そんな道彦が16歳の時、女子高生を暴行したあげく絞殺し、行方をくらましたのである。
ある夜、みゆきに付き添って大介が大竹邸を訪れると、いるはずの多枝子の姿がない。そして、すすけた天井からは謎の血が垂れていた。
通報で駆けつけた警察とともに大介が屋根裏に踏み込むと、そこはひどい異臭と山のようなゴミ。その奥には、暴行を受けていた多枝子と、屋根裏に潜んでいた殺人犯である道彦の姿があった。
知らずに殺人犯と暮らし、その被害にあった事実も恐ろしい。だが、自分の死後も人殺しをした孫を匿おうとした祖母の間違った愛情にも身の毛がよだつ、おぞましさを感じたエピソードである。
わたなべ先生の描くホラーでは、不気味な怪物や無残な死体の衝撃的な描写以上に、身勝手な人間たちの恐ろしさが目を引く。多くが昭和に描かれた作品ながら、今読んでも十分に「ゾッ」とさせられるはずだ。
わたなべまさこ先生のSNSには、スタッフを通じて素晴らしい作品が公開されている。かつて、わたなべ先生の描く美少女に憧れた読者は、ぜひ一度チェックしてみてほしい。
※本記事は2025年8月5日に公開された記事を再構成したものです。


