■「完全なる料理の鉄人」最後の対決!「陳建一VS坂井宏行」

 『料理の鉄人』では、たびたび鉄人VS鉄人の戦いも繰り広げられた。そして1999年9月、6年間にわたって続いた番組はいよいよ最終局面を迎える。そのフィナーレを飾る企画として行なわれたのが、「最強鉄人決定戦」だった。

 ここで戦いを繰り広げたのは、長年番組を支えてきた中華の鉄人・陳建一さんと、フレンチの鉄人・坂井宏行さんだ。2人に与えられたテーマ食材は「オマール海老」だった。

 この食材を聞いた瞬間、陳さんには複雑な思いがあったという。後年のインタビューで陳さんは、「オマール海老を得意とする坂井さん相手に、この食材は不利だと感じた」と明かしている。

 しかし当の坂井さんもまた、テーマ食材を聞いた瞬間に「負けた!」と思ったという。その理由は過去にオマール海老対決で連敗していたという、苦い経験があったからだ。

 ふだんから頻繁に連絡を取り合うほど仲のいい2人だが、この最終決戦前は互いに一切連絡を取らず、真剣勝負に挑んだというエピソードも残っている。

 「オマールの網脂包み揚げ」「オマールのビスク卵入りムース」といった、鉄人ならではのハイレベルな料理が披露されたバトルの結果は、わずかな差で坂井さんが勝利をおさめた。試合後、2人が抱き合い、涙を流していたのが印象的だった。

 陳さんと坂井さんは、長年同じキッチンスタジアムで挑戦者を迎え撃ってきた仲間であり、ライバルでもあった。そんな2人が最後に迎えた直接対決は、『料理の鉄人』の歴史を締めくくるにふさわしい伝説の一戦となったのだ。

 

 一度聞いたら忘れられない荘厳なテーマ曲、主宰である俳優・鹿賀丈史さんの絶妙な表情とセリフ、そして緊迫感を高めるナレーション。『料理の鉄人』は、豪華食材を使った料理バトルだけでなく、一流料理人たちの意地とプライドがぶつかり合う姿そのものが大きな見どころだった。

 「一度でいいからあの料理を食べてみたい」そんな憧れとともに、料理の奥深さや面白さはもちろん、料理にかける情熱を日本中に伝えてくれた番組といえるだろう。

 

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料理の鉄人名勝負十二番 (扶桑社文庫 く 4-1)
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