■一部地域のみで放送された、幻の第39話

 世界を救ったデビルマンの帰還で幕を閉じた、アニメ版『デビルマン』だが、実はこの作品には「もうひとつの最終回」が存在する。それが幻の最終回として知られる、第39話「妖獣ゴッド 神の奇蹟」だ。

 その背景には、プロ野球オールスターゲームの中継があった。NET系列はこの中継によって枠が埋まったが、系列外の地方局には中継されず、1話分の放送枠が空いてしまったのである。その穴を埋めるために制作されたのが、この第39話だったとされている。

 この回に登場する妖獣ゴッドは、思い描いたことを何でも実体化できる、神のごとき能力の持ち主だった。ゴッドは「邪魔をすれば、ミキに正体をばらす」と脅迫し、デビルマンの反撃を封じ込める。

 だが、ミキの弟・健作(タレちゃん)に危機が迫った時、明はついに彼女の目の前で変身。かろうじてゴッドを退けたものの、正体を知られた以上、もはや地上では暮らせないと明は別れを覚悟した。

 しかし「どんな格好になったって、中身は同じ明くんじゃない!」というミキの言葉に救われ、明は人間として地上で戦い続ける道を選ぶのだった。

 NETテレビが視聴できる関東圏などの視聴者にとっての最終回は第38話だが、それ以外の地域では、この第39話が最終回として放送されたのである。

 インターネットも配信もなかった当時、第38話で完結したと信じていた多くの視聴者が第39話の存在を知るのは、のちの再放送でのことだった。

 なお、どちらの最終回においても魔王ゼノンとの決着は描かれず、物語としては終わっていない。

 アニメ版の脚本を手掛けた辻真先氏は、後年のインタビューで最終決着について問われた際、「(もし続編があれば)デビルマンは死ぬのではないか」と語っている。

 もしアニメ版の続編が描かれたら、そのラストは原作漫画に近い悲劇的なものになっていたのかもしれない。

 

 同じ時期に生み出されながら、原作漫画とテレビアニメではまったく異なる道をたどった『デビルマン』。

 世界を守るヒーローとして戦い抜いたアニメ版の明と、対照的にすべてを失って自らも報われることなく命を落とした原作版の明。作品のテイストはもちろん、彼がたどり着いた物語の結末も、まさに正反対だった。

 これほど大きく異なった展開でありながら、どちらの作品も半世紀を超えて語り継がれる不朽の名作となったのは、作品が持つ奥深さを示しているといえるだろう。

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