『クロスゲーム』に『ダイヤのA』にも…高校野球漫画で読者を驚かせた「ダークホースの劇的勝利」の画像
少年サンデーコミックス『クロスゲーム』第1巻(小学館)

 第108回全国高校野球選手権大会、いわゆる「夏の甲子園」が閉幕して久しい。2026年の夏も、真夏にふさわしい熱き戦いを繰り広げた高校球児たちの健闘は、多くの野球ファンに感動を与えたことだろう。

 さて、今年の夏の高校野球は波乱続きの展開となり、優勝を予想された強豪校が道半ばで敗退する波乱の幕開けとなった。こうした強豪を打ち破った高校は「ダークホース」と呼ばれて脚光を浴び、さらなる快進撃を期待される例は、高校野球の長い歴史の中では数知れない。

 そんなダークホースの登場にワクワクさせられるのは、現実の高校野球に限った話ではない。漫画においても、予想外のチームが強豪校を打ち破る展開には興奮させられる。

 そこで今回は、ダークホースの勝利に驚かされた名作高校野球漫画を紹介しよう。

 

※本記事には各作品の内容を含みます。

 

■『ドカベン』土佐丸・明訓を制すも3回戦で散った弁慶高校

 昭和を代表する高校野球漫画『ドカベン』(水島新司さん)には、多くの読者を仰天させたダークホースが登場する。それは、主人公・山田太郎が2年生の夏の甲子園で対戦した弁慶高校だ。

 弁慶高校は、4番バッターの武蔵坊数馬、エースの義経光の“2本柱”を擁するチーム。地方の予選大会では全試合を1対0で勝利するという驚異的な戦績を引っ提げて甲子園に乗り込んできた。

 下馬評では「大会の台風の目になるか?」と注目されたが、トーナメントの組み合わせはあまりにも過酷だった。初戦で明訓高校のライバル・土佐丸高校、そして第2回戦では甲子園2連覇中の王者・明訓と対戦することになったのである。

 だが、ふたを開けてみると弁慶高校は圧倒的に強かった。土佐丸戦では武蔵坊の狙いすましたフォーク打ちで決勝点をもぎとり、1対0で下剋上を果たす。

 そして全国の注目が集まった明訓との試合では、「第1球にど真ん中のストレートを投げる」という前代未聞の予告投球を敢行。これにより「1番・山田太郎」の采配を誘導し、明訓の得点力を削る奇策を成功させた。

 この試合では武蔵坊と義経が山田たちと見事に渡り合い、最後は劇的なサヨナラ勝ちで明訓を下した。優勝候補の2校を立て続けに倒した弁慶高校は、下馬評通り、いや、それ以上に強烈な「台風の目」となったのだ。

 だが、その勢いのまま弁慶高校が全国制覇したのか……といえば、そうではない。明訓戦での激闘によって倒れた武蔵坊を欠いた3回戦はボロ負けし、甲子園を去ることになる。登場から退場まで、まさに台風のような鮮烈な印象を残したチームだった。

■『クロスゲーム』因縁の性悪監督が率いる強豪を下した公立校

 現実世界の高校野球では、やはり部活動に力を入れている私立校に強豪が多い。甲子園で公立校が勝ち上がること自体が珍しく、今年の夏の甲子園では全49校のうち、公立校の出場は9校にとどまった。

 しかし、漫画の世界ではダークホースの公立が私立を制することもある。特に印象的なのが、『クロスゲーム』(あだち充さん)の都立瀬名高校だ。

 物語の第125話、主人公・樹多村光が仲間とともに次の対戦相手の試合を見に行くと、そこにいたのはかつてのチームメイト・三木竜正だった。彼は瀬名高校の「4番・ピッチャー」としてマウンドに立っていたのだ。

 三木はもともと、光たちの星秀学園で外野の要を期待された有望株だったが、当時の監督・大門秀悟に反発し、星秀学園を去った過去を持つ。意外な人物の再登場に光たちも読者も驚かされたが、物語はさらに衝撃的な展開を迎える。

 何の因縁か、瀬名の対戦相手は、その大門が現在監督を務める強豪校・黒駒実業高校だった。前評判では圧倒的に黒駒有利と目されていたが、三木の投打にわたる活躍によって、試合は瀬名のペースで進む。無名の公立校に追い詰められるという想定外の現実に、大門監督はイラ立ちを隠せず「さっさと終わらせろ!」と叫ぶ姿がなんとも哀れだった。

 結局、試合は2対1で瀬名高が勝利し、星秀が待つ2回戦へと駒を進める。強豪を相手にこれほどの力を見せた三木が、なぜ無名の都立高を選んだのか……その理由を、彼はこう語った。「おれは野球をやりたいんだよ。 勝ったら全員で抱き合える野球を——な」と。

 黒駒戦に勝利した瞬間、マウンドの上でチームメイトと喜びを分かち合う三木は、その願いをかなえたのだ。

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