■敵を撃たない!? 次元があえて狙った小さな的
最後は『ルパン三世 PART5』第19話「7.62mmのミラージュ」のエピソードだ。
物語は、大富豪ジルベルスタインとルパンのチェス勝負を中心に展開される。もっとも、チェスはあくまで口実であり、ジルベルスタインの真の目的は、雇った腕利きのスナイパーにチェス対局中のルパンを狙撃させ、その瞬間を特等席で見物することであった。ゆえに、その背後では、ルパンを狙うスナイパーと、彼を守る次元による息詰まる狙撃戦が開幕する。
次元が相手にするのは、かつての戦友である女性スナイパー、ミラージュ。かつての仲間を相手に、命を懸けた激しい戦いが繰り広げられた。
そして、ミラージュがルパンの頭部に照準を合わせ、引き金を引こうとした瞬間。次元は彼女ではなく、彼女が構えるライフルのボルトハンドルを正確に撃ち抜く。戦友の命を奪うのではなく、あえてライフルの小さな部品を狙うという神業を見せたのである。
ボルトが動かなくなったことで、次の弾を装填できず、ライフルは使えなくなってしまう。それでもなお、ミラージュはなぜかルパンに近づいてまで、執拗にその命を奪おうとする。
するとここで、意外な事実が明らかになる。次元がミラージュだと思って戦っていた相手は、実は彼女の娘だったのだ。娘は病気を患う母親の治療費を稼ぐため、スナイパーとして仕事をしていたのだ。
真実を知ったルパンは、チェスの負けを口実に母親の治療費を払い、次元は狙撃戦に勝った証として娘からライフルを没収することで、スナイパーとしての仕事から足を洗わせる。最後は、ルパンと次元がそれぞれのやり方で母娘を救う、粋な結末が描かれた。
漫画・アニメ界でも屈指のガンマンとして名高い次元大介だが、その魅力は百発百中の射撃だけではなかった。
虫歯の痛みで銃が撃てなくなったり、特定の帽子がないと狙いが定まらなくなったり、また、相手を殺せる場面であえて小さな的を狙ったりと、完璧ではないところがまた面白い。
そんな人間味と凄腕を併せ持つところこそ、次元が長きにわたりルパンの最高の相棒として愛され続ける理由なのかもしれない。


