■真下のプロポーズ、そして2児の母へ

 そんな雪乃と真下の関係が、次の段階へ進むことになる。それが、2005年公開のスピンオフ『交渉人 真下正義』だ。

 クリスマスイブに発生した事件における真下の活躍を描いた本作のラストで、真下はついに雪乃にプロポーズする。その際、せっかく用意した指輪を落としてなくしてしまうという真下らしい失敗もあったが、その指輪も無事見つかり、晴れて雪乃の左手の薬指に指輪がはめられることになった。

 それから5年後、2010年公開『踊る大捜査線 THE MOVIE 3 ヤツらを解放せよ!』では、雪乃本人の登場はないものの、真下との間に2人の子どもを授かっていることが判明する。かつて刑事として事件の最前線に立っていた雪乃は、結婚を経て2児の母という新たな人生を歩み始めていた。

 こうして見ると、雪乃は刑事として着実にキャリアを重ねる一方で、結婚や子育てを通して人生の新たなステージへと進んでいることが分かる。事件の最前線に立つ「刑事」としての顔に、「妻」そして「母」という新たな顔が加わったのだ。

 そして2012年公開の『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』では、息子の勇気が誘拐事件に巻き込まれるという悲劇に見舞われてしまう。かつて自身が事件の被害者として警察に守られる側だった雪乃が、今度は我が子の身を案じる母親として事件に向き合うことになるのである。

 事件が解決し、夫の真下から勇気が無事だと知らされると、雪乃は涙を流して安堵する。その姿は、あらためて雪乃が「母」となったことを強く印象づける場面であった。

 

 柏木雪乃の歩んできた人生を振り返ると、まさに「波瀾万丈」という言葉がふさわしい。物語の冒頭で犯罪被害者として登場した彼女は、青島との出会いをきっかけに警察官を志し、やがて刑事へと成長を遂げる。そして真下との結婚を経て2児の母となり、長いシリーズのなかで、その立場を何度も変えてきた。

 そんな雪乃が、最新作『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』では「元湾岸警察署刑事」として再登場する。さらに、かつて誘拐された息子・勇気は、警視庁刑事部捜査第一課の管理官として登場するという。

 雪乃の歩んできた人生そのものが、『踊る大捜査線』が積み重ねてきた長い歴史を映し出しているかのようだ。

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