■技術(わざ)を使わせたピクル

 勇次郎が地上最強の生物であるなら、2億年近く前の時代を生きていた原人・ピクルは「史上最強の生物」である。そんなピクルが現代に蘇った時、勇次郎は本能的に興味を抱き、戦いたいと感じていた。そして、ピクルが収容されている施設に堂々と乗り込み、正面から力比べを挑んだ。

 恐竜を捕食して生きていたピクルは、技など持たず、純粋な力だけで自分より巨大な生物に勝ち続けてきた。その野生の力を試そうと、勇次郎はピクルと拳を合わせるが、すぐさま力負けの予感に襲われる。

 そこで勇次郎は瞬時に合気で応戦してしまい、「俺を技術(わざ)に追い込みやがった……………ッッッ」と驚く。勇次郎は、格闘技術自体を「弱者のためのもの」と考えており、力だけで相手を叩きのめすスタイルを貫いてきたからだ。つまり勇次郎は、ピクルの圧倒的な力を前に、一瞬とはいえ弱者の立場に追いやられたともいえる。

 その後、勇次郎とピクルが本気でぶつかり合う場面はなく、結局どちらが強いのかは不透明なままである。もしも正式に戦った場合、一体どのような決着がつくのか気になるところだ。

■気絶手前まで追い詰めた範馬刃牙

 勇次郎をもっとも追い詰めたのは、やはり息子である主人公・範馬刃牙だろう。「地上最強の親子喧嘩編」において、刃牙はそれまで培ってきたありとあらゆる技を駆使し、勇次郎に挑んだ。

 蜚蠊(ゴキブリ)ダッシュ、鞭打、虎王など、父に対して技を出し惜しみすることなく、己の力をぶつける姿はどこか楽しそうにも見えた。そんな中、特に勇次郎を驚かせたのが、ビスケット・オリバ戦でも使用した「0.5秒の無意識」を利用した攻撃である。

 作中の説明では、人間が外部からの刺激を認識して行動に移すまでには0.5秒の遅れが生じるとされ、その無意識下の隙を突くことで攻撃が見えなくなるという。

 勇次郎もこの攻撃をまともに食らってしまい、危うく卒倒しかけた。しかし、ギリギリのところで踏みとどまり、気絶は免れた。これには勇次郎も「いつ以来のダウンだ……?」と口にするほどだった。

 その後も刃牙は果敢に攻め続け、勇次郎を満足させたため、この喧嘩は親子で空想の食卓を囲む「エア夜食」という形で幕を閉じる。そして勇次郎は「ここに……地上最強を名乗れ」と刃牙に告げ、最強の称号を譲るのである。

 結果に納得していない刃牙はそれを認めなかったが、まともな勝負で勇次郎をここまで追い詰めたのは刃牙しかいないだろう。

 

 作中で圧倒的な強さを誇る勇次郎が追い込まれる姿は、かなりレアである。物語が進むにつれて勇次郎の化け物ぶりは凄みが増しているが、今後彼が本当の意味で圧倒される場面は訪れるのだろうか。まだ見ぬ強者の登場を期待したいところだ。

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