■料理勝負の枠を超えた命がけの壮絶バトル! コスプレ集団が乱舞する衝撃も

 最後に紹介する『一本包丁満太郎』は、1985年から『ビジネスジャンプ』(集英社)で連載され、全33巻という長期連載となった青年向け作品。下町の若き料理人・風味満太郎が、創意工夫を凝らした料理でライバルたちに勝負を挑む内容だ。

 作中では奇抜な調理法もさることながら、満太郎自身がかなり危険な目に遭っているのが特徴。牛丼勝負では「まむし牛丼」という画期的アイデアで読者を驚かせるも、満太郎の牛丼を気に入った暴力団の組長に拉致されてしまう。

 無人島での「サバイバルキッチン」のエピソードでは、川などの水源に毒を流されて脱水症状に陥るなど、とにかく物騒。一方、ふぐの調理免許を持たない満太郎が「どこかに免許が無くても調理させてくれるところはないか」とこぼすなど、ツッコミどころも満載だった。

 そんな本作を代表するトンデモ料理法といえば、お好み焼きの中心に穴が空いた「宇宙焼き」だ。お好み焼きを自由に操る少女・お好み姫の「蝶々焼き」に対抗して開発した。

 驚くべきことに、両者のお好み焼きはどちらも「空飛ぶお好み焼き」というコンセプト。満太郎は相手のかつお節を空中で奪い、輪っか状の宇宙焼きを少年2人に棒でキャッチさせて売るという曲芸技まで披露した。

 だが、本作においてもっとも忘れられないのが、「おにぎり師」と呼ばれる“おにぎり職人”たちの強烈な見た目である。北海の政は、頭に大きな蟹をつけ、インナーはスケスケの網状。下関源太はウニを模したトゲトゲの髪形で、体にはこんぶを巻き付けている。山田屋甚太は、体中に山菜をまとい、料理人にもかかわらず包丁ではなく農具を背負っているなど、奇抜すぎるファッションが目を引いた。


 ビッグ錠氏が描いた昭和のグルメ漫画では、フィクションならではの奇想天外な調理法が数え切れないくらい飛び出した。今ならコンプライアンス的に問題になりそうな禁断のネタも、勢いと迫力でねじ伏せるエンタメ精神に満ちている。

 一見すると荒唐無稽だが、強引であればあるほど読者の胸を熱くさせるエネルギーに満ちあふれたビッグ錠作品を、ぜひ今一度味わってみてほしい。

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