2026年夏、料理漫画『鉄鍋のジャン!』(原作:西条真二氏/原作料理監修:おやまけいこ氏)のテレビアニメ化が大きな話題を呼んだ。あまりにも過激なキャラクターと驚愕の料理描写に「本当に全国放送して大丈夫か?」と心配の声が上がったほどである。
しかし、昭和まで料理漫画の歴史をさかのぼれば、昨今の奇抜な料理漫画をも凌駕する強烈なインパクトを残した伝説的な作品も存在する。その代表格が、今日における「グルメバトル(料理対決)」の礎を築いたパイオニアでもある漫画家・ビッグ錠氏の手がけた作品たちだ。
常識では考えられないダイナミックな調理法、ハチャメチャな料理を生み出す破天荒な料理人たち、そして彼らの死闘を彩る解説と観衆の熱狂は凄まじいものがあった。
そこで今回は、多彩なビッグ錠作品の中から、筆者が衝撃を受けたとんでもない調理法の数々を紹介。現代の料理漫画にも脈々と受け継がれる、その熱量と魅力について迫りたい。
※本記事には各作品の内容を含みます。
■安全性は度外視!? グルメ漫画史に残した強烈なインパクト!
最初に取り上げる『包丁人味平』は、1973年から『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載された「グルメバトル漫画」の原点とされる作品だ。原作は、劇画原作者として知られる鬼才・牛次郎氏。日本料理界の重鎮を父に持つ主人公・塩見味平が、一部富裕層に向けた日本料理界に反発し、大衆を笑顔にする料理の道を志して、ライバルたちと奇抜な料理対決を繰り広げる物語である。
当時のジャンプ誌面は『アストロ球団』や『ど根性ガエル』といった熱量あふれる人気作がひしめいていた。そんな中『包丁人味平』は、“グルメバトル”という現在の料理漫画に通じる屋台骨を確立し、カルト的な人気を得ていた。
その一方で、昨今の料理漫画では必須ともいえる「現実的なうんちく」や「繊細な味の評価」はほとんど存在せず、奇抜な展開と勢いが魅力の作風だった。
勝負のテーマが変わるたびに、読者の想像を絶する奇抜な料理が登場。「包丁試し」のエピソードでは、味平から滴り落ちた汗が調理中の潮汁に入り、その塩味が決め手になって勝利。また「カレー戦争」のエピソードでは、中毒性の高い危険なスパイスを用いた「ブラックカレー」が登場するなど、衛生面や倫理的な面で読者をザワつかせる場面も少なくなかった。
そして異端の料理人「無法板の練二」こと鹿沢練二の調理法も凄まじいものがある。その究極ともいえるトンデモ調理法が、「地雷包丁」である。
マグロの肉の組織に合わせて何本もの包丁を突き立て、マグロの身に差し込んだダイナマイトに葉巻で着火。その爆発によってマグロを一気に解体するという狂気の技だ。さらに驚くべきは、このとんでもない技が一般の宴会場で行われ、浴衣姿の客が大勢見守るなかで行われた点である。
結果として、見事にマグロは切り身になったが、爆破時のコマをよく見ると怖ろしいことに気付く。なんと爆発の勢いでマグロに刺さった無数の包丁があちこちに吹き飛んでいたのだ。本作の料理人たちが命がけで調理するのは言うにおよばず、それを見守る観客たちも命がけで見届けていたのである。
■身近な生活用品が調理器具に変わる? あまりにも恐ろしすぎた「時短調理法」
『包丁人味平』と同じく牛次郎氏とのタッグによる料理漫画『スーパーくいしん坊』は、1982年から『月刊少年マガジン』(講談社)で連載された。町の洋食店の跡取り息子・鍋島香介が、中学生ながら持ち前のアイデアと度胸でプロの料理人たちに挑んでいく物語。
本作の最大の特徴は、時短のための個性的すぎる調理法の数々だ。
50人分のラーメンを茹でる際に洗濯機に麺を放り込み、イカを乗せたジャンボ寿司を楽器のハープの弦で一気に切るなど、衛生面を考えると冷や汗が止まらない、とんでもない調理法を見せている。
そんな本作で印象的だったのが、車のタイヤのホイールキャップで作る「スーパー回転お好み焼き」だ。カセットコンロの上に、お好み焼きの具材を入れた金属製のホイールキャップを固定。そこにロープを巻きつけ、コマを回転させる要領で一気に引っ張って高速回転させて焼き上げる。
香介いわく「遠心力で生地が均一に広がり、素早く焼ける」という破天荒かつダイナミックなアイデア調理法だ。とはいえ鉄板代わりのホイールにフタはなかったので、本来なら中身が吹っ飛んで大惨事になりそうな点はご愛嬌だ。
そしてもう1つのトンデモ料理法が「火の玉チャーハン」である。チャーハンの具材を投入した2つの中華鍋を上下にくっつけて密閉した球体を作り、それをワイヤーで吊るしてコンロの上で猛烈な速さで回転させながら、火だるま状態で炒めるという狂気の調理法である。
長年「漫画ならではのファンタジー」と思われていたこの調理法だが、2017年放送の『マツコの知らない世界』(TBS系)の「マンガ飯の世界」特集にて、スタジオで実際に再現された。本番前のリハーサルでは大惨事になったそうだが、本番では「火の玉チャーハン」を見事に再現。この異様な光景に、MCのマツコ・デラックスも驚愕していた。


