■死の淵から戦況を一変させた「完全虚化」
破面(アランカル)篇で、一護が絶望的な状況に追い込まれたのが、十刃(エスパーダ)のウルキオラ・シファーとの戦いである。
ウルキオラが帰刃「黒翼大魔(ムルシエラゴ)」を解放すると、その速さと攻撃力に一護はまったく歯が立たなくなる。渾身の「月牙天衝」を放っても、ウルキオラに傷をつけることさえできなかった。
さらにウルキオラは「刀剣解放第二階層(レスレクシオン・セグンダ・エターパ)」へと至り、一護を圧倒。天蓋の上で一護は胸に穴を開けられてしまう。
一護のその姿を目の当たりにした織姫は絶叫する。そして、助けを求めて悲痛な叫びを上げるのだが、その彼女の声をきっかけに一護の体に異変が起こる。再び立ち上がった一護は、2本の角を持つ仮面をまとった虚へと姿を変え、我を失った状態でウルキオラに襲いかかった。
すると、それまでの力関係が逆転。先ほどまで一護を攻め立てていたウルキオラを、今度は虚と化した一護が圧倒する。さらに破面の移動術「響転(ソニード)」を駆使した素早い動きと容赦のない攻撃で、ついにはウルキオラへ致命傷を負わせた。
しかし、暴走した一護には仲間の声すら届かない。倒れたウルキオラにとどめを刺そうとする一護を雨竜が制止するが、今度は雨竜にまで刃を向けてしまう。
織姫の叫びをきっかけに目覚めた圧倒的な力。しかしそれは、仲間すら傷つけてしまう制御不能なものでもあった。強さと恐ろしさが表裏一体となった、衝撃的な覚醒シーンである。
■すべてを失う代償と引き換えに放った「最後の月牙天衝」
破面篇の最終局面では、崩玉と融合し、進化を続ける藍染惣右介が一護たちの前に立ちはだかる。
一護は藍染を倒す切り札「最後の月牙天衝」を習得するため、断界で修行に臨む。そして戻ってきた一護は、崩玉と融合した藍染ですら霊圧を感知できないほどの領域へと達していた。
その力は、戦いが始まると明らかになった。藍染が放つ、完全詠唱の「破道の九十・黒棺」を打ち破り、斬魄刀による攻撃も片手で受け止める。それどころか、逆に藍染の体に傷を負わせるほどの力を見せた。
それでも藍染はさらに姿を変えていく。進化を続ける相手との戦いに決着をつけるため、一護はついに「最後の月牙天衝」を使うことを決意した。
「最後の月牙天衝」とは、その言葉通り、一護が「月牙」そのものとなる力だ。そして放たれた「無月」は、黒い霊圧で藍染を両断する。とどめを刺すには至らなかったが、藍染の力を大きく弱らせ、浦原喜助による封印術を発動するための決定打となった。
だが「最後の月牙天衝」を使えば、一護は死神の力をすべて失ってしまい、これまで積み上げてきたものも手放すことになる。それでも一護は迷わず「無月」を放つと、その力は消え始め、斬魄刀も消えていく。
あまりにも大きな代償だったが、すべてを失うことを知りながら、それでも刀を振るう一護の覚悟がもっともよく表れた場面だった。
こうして振り返ると、一護の覚醒の場面はいつも「誰かを守りたい」という思いから始まっているように思える。ときには自分自身を危険にさらし、大切な力を失う代償まで背負ってきたが、絶望的な状況で開花するその力は、今もなお強烈な印象を残している。
現在放送中のアニメでも、一護は新たな覚醒を見せている。物語の結末まで、彼の戦いから目が離せない。


