羽海野チカによる同名コミックを映画化した『ハチミツとクローバー』(以下『ハチクロ』)。2006年に公開されて大ヒットを記録した本作は、2026年8月から公開20周年を記念してリバイバル上映も行われている。
この作品は、美大生5人の切ない群像劇を描いた、2000年代を代表する青春ラブストーリーだ。
筆者のなかの“大学生のイメージ”は、この『ハチクロ』とドラマ『オレンジデイズ』(TBS系)で培われたといっても過言ではない。大人と子どものちょうど狭間にいる大学生は、将来への期待と不安を同時に抱えながら、自分探しにもがいていることが多い。
そんな人生で一度きりの“モラトリアム”を、『ハチクロ』は優しく、そしてちょっぴり残酷すぎるほどリアルに映し出しているのだ。
※本記事には作品の内容を含みます
■大人になったから分かる、“これこそ本命候補!”櫻井翔演じる竹本の不器用すぎる魅力!
『ハチクロ』を語る上で欠かせないのが、主演の櫻井翔の尊さである。本稿では、櫻井が演じた竹本の(いや、櫻井翔の?)魅力について改めて語らせていただきたい。
竹本は、個性豊かなキャラがそろう花本研究会(美術史の講師である花本の研究室に所属する、学生による会合)のなかでは、いちばんの常識人。あの櫻井の顔面を持ちながら、女友達に「健康的すぎる」「旦那ならいいかな」と言われてしまうような、さえない青年だ。
かつては、筆者も竹本のことを「たしかに、櫻井翔だからいいけど、櫻井翔じゃなかったらなぁ……」と思っていた。「森田(伊勢谷友介)のつかめない感じのほうがいいもんなぁ……」と。
しかし、年齢を重ねたいま、思う。竹本は、最高です。
竹本は、なんていうか、恋愛に手慣れていない。だから、ちょっと危なっかしい雰囲気を持つ森田に敵わないわけだけど、いまはその手慣れてなさこそが、彼の魅力だと思う。
変に駆け引きをせず、まっすぐに向き合ってくれる誠実さ。片想いの相手・はぐみ(蒼井優)をランチに誘うときも、「もし、あの、昼一緒に食べる相手がいなかったらなんだけどっ! つまり、花本先生が都合が悪かったりしたらなんだけどっ!」とめちゃくちゃ前置きをしたあとで、「今日一緒にお昼食べるっていうのは……どうだろう?」と子犬のような瞳で切り出すのだ。
はぐみがコクリとうなずくと、「そう! じゃ、お昼休み、学食で! 俺席取っとくし!」と小躍りを始めそうな勢いではしゃぐ。そして、「あのっ」と引き止められると、すぐさまはぐみの元に戻り、「なになになになに? やっぱやめとく?」と、なぜか断られる方向に話を持って行こうとする。これ、モテ男は絶対にやらないやつだ。
さらに竹本は、待ち合わせ場所に着いたら、顔を見るなりめちゃくちゃ嬉しそうに手を振ってくれる。食堂の行列にも、勝手にひとりで並んでくれる。
でも、いや、だからこそ(?)モテない。待ち合わせにちょっと遅れて来るであろう、森田のようなタイプのほうがモテるのが悲しい。森田はおそらく、「え〜! 行列並ぶのだるい〜!」って駄々をこねるだろうし、なんなら「俺、今月金欠だから奢って」とか言ってくるタイプ。それなのに、モテる。ずるい。
■それでも竹本優勝! だって“かわいいは正義”
それでも、わたしは竹本が好きだ。
ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)でも、「かわいいは最強なんです。かっこいいの場合、かっこ悪いところを見ると幻滅するかもしれない。でも、かわいいの場合は、何をしてもかわいい。かわいいの前では服従。全面降伏なんです」というセリフがあったが、まさにそのとおり。かつては森田ラブだったはずなのに、いまは「竹本しか、勝たん!」となっている。だって、かわいいは正義だから。
それにしても、あれだけのビジュアルを持ちながら、“さえない”を成立させていた、櫻井の演技力がすごい。本来の櫻井は、「城はいいよ。昔の建造物はいいよ」なんて相手の好みも考えず、デートで自分のことをペラペラ語ったりなんかしない(はず)。それなのに、『ハチクロ』で竹本を演じているときには、「ああ、この人ならやりかねない」と思わせるのがすごい。
そうだ。リバイバル上映で『ハチクロ』を鑑賞する方は、ぜひ開始5分の櫻井(もとい、竹本)に注目してほしい。恋に落ちたあとの表情が、最強にメロすぎるので!


