■“完璧”を嫌うマユリが、唯一完成を願った存在

 それまで、冷酷なマッドサイエンティストとして描かれてきた涅マユリ。その人物像に新たな一面が見えたのが、「千年血戦篇」における星十字騎士団(シュテルンリッター)のペルニダ・パルンカジャスとの一戦だった。

 霊王の「左腕」とされるペルニダの規格外の能力と強さを前に、マユリは次第に窮地へと追い込まれていく。そんな彼を救うために立ち上がったのが、副隊長・涅ネムだった。

 ネムはマユリの「眠計画」によって生み出された被造魂魄「眠七號」だ。幾度もの失敗と改良を経て現在の姿へと成長したネムは、マユリにとって最高傑作ともいえる存在である。

 マユリはそんなネムを日頃から足蹴にし、危険な場面では捨て駒のように扱うなど、自らの意のままに扱ってきた。ところが、この戦いでネムはマユリの命令に背き、自らの意志で彼を救うために限界を超えて戦った。それは“完璧”を嫌うマユリが、唯一その“完璧”を夢見た存在だったのではないだろうか。

 だが、その代償は大きかった。ネムは戦いの末、ペルニダの無数の神経に肉体を貫かれ、マユリの目の前で爆ぜてしまう。このときマユリが初めて見せた動揺の表情は、非常に印象的だった。

 その後、辛くもペルニダとの戦いに勝利し、保護瓶の中で傷を癒すマユリ。彼は因縁の相手・浦原に対し、「次に会った時は……私とお前の差を見せつけてやるとしよう……!」と、自ら進化する魂魄を完成させたことを誇る。そして、ネムの大脳を抱えながら、「私とお前の… 2人でだ…」と静かに続けるのであった。

 この「2人でだ…」という言葉は、これまで冷酷なマッドサイエンティストとして描かれてきたマユリからは想像もつかない、ネムへの深い愛情を垣間見せるものだった。

 

 『BLEACH』には数多くの強者が登場するが、マユリほど独自の方法で戦う死神はほかにいない。敵の能力を分析し、薬を生み出し、肉体や斬魄刀まで改造する。戦いのたびに新たな知識を得て、自らの力へと変えていくことこそが、マユリの強さなのである。

 “完璧”を嫌い、常に進化を求め続けるマユリ。その姿勢は物語のラストまで変わることはなく、最終話では新たな「眠八號」とともに研究に没頭する姿が描かれた。

 常識外れの言動、底知れぬ探求心、そしてネムとの関係から垣間見えた意外な一面。そのすべてが唯一無二の魅力につながっている。まさに『BLEACH』屈指の異質な強者、それが涅マユリなのである。

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