■OVA『新世紀GPXサイバーフォーミュラZERO』ハヤトが後輩に教えた、レーサーとして走る意味!
『サイバーフォーミュラ』シリーズで描かれた「ライバルとの関係」という意味で、特に印象深いのが、シリーズ3作目のOVA『新世紀GPXサイバーフォーミュラZERO』の最終話、ROUND8「それぞれの未来へ」である。
『ZERO』は、前シーズンで大事故に遭ったハヤトが、再びレーサーとして立ち上がる物語でもある。ドライバーの全神経を極限まで高める感覚“ZEROの領域”に足を踏み入れ、死の恐怖と向き合いながら、それでも走ることをやめなかったハヤト。その苦しみの先で、彼はレーサーとしての自分を取り戻していく。
そんなハヤトと同じスゴウチームに加入したのが、アンリ・クレイトーだ。しかし彼は、史上最年少でワールドチャンピオンに輝いたハヤトのことを一方的に逆恨み。ハヤトのチームメイトになってからも執拗に敵意を向け続け、その関係は最終戦の時点でも修復されないままだった。
アンリにとって、ワールドチャンピオンがかかった大一番。ところがレース中盤、彼は接触事故を起こし、レースに復帰したものの戦意を喪失。ピットに戻ると「これ以上走ったって無駄」と言って、マシンを降りてしまう。
そのときアンリを奮い立たせたのは、同じくピットインしたハヤトの「アンリ! 行くぞ、僕についてこい!」という言葉だった。
そこからのハヤトは凄まじかった。心が折れかけたアンリに喝を入れると、ハヤトはアンリの前を先導するように先頭集団を猛追する。
そのハヤトの気迫の走りを見ながら、アンリも必死に食らいついていく。その大きな背中を見ながら、アンリはレーサーとしてのプライドを取り戻していく。そしてハヤトは、はるか先のトップを走るブリード加賀に勝つべく、限界を超える走りを見せるのだった。
すると鬼気迫るハヤトの走りに感化されたアンリも意地を見せる。新条にブロックされたハヤトを前に出させるため、強引に進路をこじ開けたのだ。
ハヤトは自分の背中で、レースを走ることの意味をアンリに示し、アンリもまたそのハヤトの熱い想いに走りで応えた。まさに、アンリがレーサーとして大きく踏み出した瞬間だった。
この最終戦は、ハヤトが壮絶な一騎打ちの末にブリード加賀を下して優勝。その結果、アンリはポイントで加賀を逆転し、初のワールドチャンピオンの座を手にしたのである。
ちなみに以降のシリーズのアンリは、それまでのハヤトに対する敵意がウソのように消え、ハヤトのことを「先輩」と呼んで慕う姿が見られるようになる。その極端な変化もまた、アンリというキャラクターの魅力といえるだろう。
『新世紀GPXサイバーフォーミュラ』シリーズには、勝敗だけでは語れない熱さが描かれている。極限のレースの中で見せる意地や誇り、ライバルたちへの敬意が視聴者の胸を打つのだ。
今回紹介した場面以外にも、まだまだ胸が熱くなるような名シーンはたくさんある。その熱さがあるからこそ、いつまでも『サイバーフォーミュラ』シリーズはファンから愛され続けるのだろう。


