1991年にテレビシリーズのアニメが放映され、今年で35周年を迎えた『新世紀GPXサイバーフォーミュラ』シリーズ。長きにわたって、熱いレースと個性豊かなドライバーたちが織りなすドラマを描き続けてきた不朽の名作だ。
最先端のテクノロジーを取り入れた、最高速度400km/hを超えるマシンでしのぎを削る本作。手に汗握る高速のレースバトルだけでなく、ドライバーたちの間に芽生える友情や熾烈なライバル関係、そして極限状態で描かれる人間ドラマも本作の大きな魅力だ。
レースに参加する以上、勝利こそが何よりも重要。だが、『サイバーフォーミュラ』の世界では、ときには勝敗を超えて心に残る感動的な瞬間がある。
そこで今回は35周年の節目に、『サイバーフォーミュラ』シリーズにあった「忘れられない胸熱シーン」をあらためて振り返ってみたい。
※本記事には作品の内容を含みます。
■『新世紀GPXサイバーフォーミュラ』新条直輝の執念のゴール!
数いるドライバーの中でも、新条直輝という男を好きになるきっかけとして、個人的に外せないシーンがある。それは1991年に放送されたテレビアニメ『新世紀GPXサイバーフォーミュラ』の第32話「第7戦 執念のゴールイン」で新条が見せた、あまりにも泥臭いゴールである。
このレースは、新条にとって自身の再起をかけた重要な一戦だった。広大なアフリカの大地を舞台に2日間に渡って行われる第7戦。しかし彼はチーム内での自身の扱いにイラ立ち、クルーに当たり散らしたあげく、1日目は最下位に沈んでしまう。そんな新条に対し、F3の時代から彼を知る城之内みきが厳しい言葉を投げかける。
みきの言葉で己の未熟さを痛感した新条は、自身の過ちを認めてクルーに謝罪する。これまでの彼が見せてきたプライドの高さを考えると、大きな変化だった。そして、のちのOVAシリーズでも続いていく新条とみきの絆が、ここから始まった点も印象深い。
そして迎えたレース2日目、新条は初日とは見違えるような走りを見せる。怒涛の追い上げでライバルたちを次々交わし、ついにトップに浮上。ついに再起を証明するかと思った、その瞬間だった。チェッカーフラッグを目前にしながら、彼の乗るファイアースペリオンは無情にも燃料切れを起こし、完全に止まってしまう。
心が折れてもおかしくない状況だったが、このときの新条は違った。公式設定で車両重量738kgとされるファイアースペリオンG.T.Rを自らの手で押し、ゴールを目指したのである。当然ライバルたちに次々と追い抜かれ、順位はみるみる落ちていく。それでも彼は、諦めることなくゴールラインを目指した。
最終的な結果は5位と優勝には届かなかったが、それでも、この新条のゴールシーンは多くの視聴者の胸を打った。筆者も「ここまでやるか」と驚き、彼のことが一気に好きになった瞬間だった。勝てなかったからこそ、最後まで諦めない彼の執念が心に残ったのだろう。
物語の序盤は、そのプライドの高さゆえに、主人公の風見ハヤトをはじめ周囲と衝突することも多かった新条。そんな彼が自分の非を認め、最後は自らの手でマシンを押してまでゴールを目指した。
この一戦は、彼がレーサーとしてだけでなく、1人の人間としても大きく成長を遂げた瞬間だったのである。
■OVA『新世紀GPXサイバーフォーミュラ11』ハヤトとシューマッハ、最後の勝負!
『サイバーフォーミュラ』シリーズ全体を通しても、屈指の名場面として名高いのが、ハヤトとナイト・シューマッハの最後の勝負だ。シリーズ2作目OVA『新世紀GPXサイバーフォーミュラ11』の最終話、ROUND6「この瞬間よ永遠に…」で描かれたこのシーンは、何度見ても胸が熱くなる。
最終戦で、圧倒的な走りを見せていたシューマッハ。しかし、彼は視神経に致命的なダメージがあり、レースを続けると完全に視力を失う危険があった。それでもシューマッハは、ハヤトとの決着を望み、最後のレースに挑む。
そのレースの中盤、ついに視界の限界を迎えたシューマッハは自らマシンを止めた。だが、そこでハヤトが見せた行動がとにかく熱かった。
シューマッハがマシンを停止させた直後、何のトラブルもないハヤトも自身のマシンを止めたのだ。そしてシューマッハに、「チャンピオンを獲っても、あなたに勝てなければ何の価値もない」「僕は最後の最後まであなたと走りたい!」と叫んだのである。
そのまま走り続けていれば、労せずハヤトは最終戦の勝利を手にしていただろう。それでも彼は、シューマッハのいないレースを選ばなかった。彼が求めたのは、最強の男シューマッハと真っ向勝負し、勝つことのみだった。
そんなハヤトの想いを受け、シューマッハは再びマシンに乗り込む。視覚を失いつつあった彼は、マシンに搭載されたサイバーシステムの音声サポートのみを頼りに、限界を超える走りを続けるのである。
さらに胸を熱くさせてくれたのが、他のライバルたちの行動である。停止していたハヤトとシューマッハが最後の勝負に挑もうとすると、それまでトップを争っていた新条直輝、フランツ・ハイネル、エデリー・ブーツホルツらが次々と緊急ピットイン。さらにカール・リヒター・フォン・ランドルに至っては、ピットでティータイムを取りながら2人がくるのを待つという粋な計らいを見せる。
こうして6台がそろい、伝説の最終勝負が始まった。
そしてハヤトはシューマッハとの死闘を制し、他のライバルも退けて2年連続のワールドチャンピオンに輝いた。ハヤトがシューマッハを待ち、それを知ったライバルたちもまた2人を待った。レーサーたちの誇りと敬意によって実現した奇跡のレースだからこそ、今も強烈に胸に残るのである。


