■ちゅーたんが見せる「ドロドロとした人間の奥底の感情」

――「お金のため」という姿勢をはっきり見せるのも“いい主人公”ではない“らしさ”だと思いますが、そういった綺麗事ではない部分を見せてくれるから、ちゅーたんは多くのファンに支持されているんだなと思います。HoneyWorksさん(以下、ハニワ)の楽曲全般も、綺麗事だけではないですよね。

ヤマコ そうですね、ハニワは結構キャラクターの裏表を描いていますね。そのあたりのリアリティを描くのが好きなんです。そんなところがファンの方たち共感してもらえているのかな、と思います。私自身もMVを描くにあたって、「この子、本当はこういうことを思っている子なんだよ」という裏側を描くのが楽しいんです。

――ちゅーたんの楽曲だと、『ディア♡マイフレンズ』(2023年11月配信)がそういった側面が色濃いです。誰もが持っているけど、あまり人に言いたくない感情を歌ってくれています。

ヤマコ ここまで生々しく感情の裏表を描いているのって、もしかしたらちゅーたんが一番かも。ドロドロとした人間の奥底の感情を描いているのは、ちゅーたんならではかもしれませんね。

――ちゅーたんのMVへの初登場曲は『ヒロインたるもの!』(2020年8月配信)ですが、当時はどんなキャラクター設定でしたか?

ヤマコ 一番最初は、同曲の主人公・涼海ひよりがLIP×LIPと仲が良さそう……気に入らない…… というような漫画の1コマでした。
 その後、楽曲『ヒロインたるもの!』(2020年8月配信)のMVでひより達との関係性を描き、アニメ『ヒロインたるもの!~嫌われヒロインと内緒のお仕事~』(TOKYO MX・2022年4月期)の制作にあたり、さらに細かいキャラクター像とエピソードを固めていきました。当初から、ひよりのライバル的なポジションで”ちょっとクセのあるイヤな子”として描く予定はありました。

 当時流行り始めていた地雷系ファッションにしようなど、どんどんキャラクターを詰めていきまして。同作ではひよりの同級生=中村千鶴=ちゅーたんの学校での姿の比重が大きいですが、ちゅーたんのほうから先に固まっていきました。

――そのあとで、ちゅーたんと千鶴を繋げる作業があったのですね。

ヤマコ そうですね。千鶴とちゅーたんはどれくらいビジュアルを変えようか、という話をしたり。ちゅーたんのヘアスタイルは実はウィッグを被っていて、その上お化粧でだいぶ目の大きさを変えていますが、当時HoneyWorksのメンバーのGomやshitoに「ちょっとビジュアル変えすぎかな?」と相談したら、「女子ってメイクでだいぶ印象かわるじゃん」と言われまして。「カラコンを入れたり、アイシャドウやつけまつげで目の大きさも変わるから、顔は千鶴って気づかれないくらい変えて大丈夫だよ」と。これ、すごく覚えています。

――そうったキャラクター設定と合わせて、MVも仕上げていくんでしょうか。

ヤマコ そうですね。MVを作りながら物語のプロットを考える作業を同時にしたり、といった中でキャラクターが詰まっていくこともありました。同時に考えることで、仕草や表情など細かいところが固まっていくんです。たとえば「ちゅーたんはムカついたときは頬をぷくっとするのではなく、相手を睨みつけるような表情をするよね」とか。

――アニメ化やコミカライズは、その後の楽曲制作にどんな影響を及ぼしますか?

ヤマコ キャラクター像が深まるので解像度がさらに上がり、次の楽曲ではよりキャラクターのリアルに迫って描けるというか、キャラクターが勝手に動く感覚になります。

――お互いに影響し合っているんですね。

ヤマコ そうですね。ハニワは「おもしろいものを作りたい」というのが前提にあるので、おもしろいアイディアやキャラクターが別の媒体で生まれたら、そこから楽曲の世界もどんどん広がっていきます。ハニワの3人だけでは思いつかないことを、島陰さんや編集者さんから提案していただけて、楽しみにしながら作っています。

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