■“ギブ・アンド・テイク”の価値観が通底するファンと推しの関係
――楽曲『可愛くてごめん』が発表された2022年と現在とでは、推し活文化に変化はあると思いますか?
島陰 漫画描写でいうと、MVではお店でCDを買っていたのを、漫画では通販で購入していたりと、変化を組み込んでみました。時代に合わせて細かくチューニングしています。
ヤマコ 推し活自体は2022年もいまも変わらないと思います。昨今の若い子は、推しがいて当たり前の生活をしていますよね、私たちが10代だったころと違って。私たちの時代は、「この曲が好きだからCDを買おう。家でずっと聴こう」という感じでしたが、いまは「推しがずっと笑顔で長く活動できるように、私たちはCDを買って支えるんだ」という感情が大きそうだなと感じます。湧き上がる熱量が高くてパワフルで、いいな! と思いますね。
―― 一方でちゅーたんは、そういった情熱があるゆえか、とんでもない行動に出てしまいます(第11話)。ちゅーたんはLIP×LIPと同じ学校に通っていますが、クラスメイトに内緒で彼らの見習いマネージャーを務めているひよりが、彼らと親密にしている姿を見てしまう。それに禍々しい感情を覚えるエピソードです。
ヤマコ そういった複雑な感情が生まれる背景には、ファンが推しとの関係性を“ギブ・アンド・テイク”だと捉えているという特徴があるのかもしれません。ですがいまは“支える”という感情が強いからこそ、「私たちも与えて、推しが輝いて、それがまた私たちに返ってくる」という解釈もあるように思いまして。
そうやって循環しているからこそ、推し活ブームがよりパワフルになり、界隈が成り立っていてすごいなあと、素直に思います。その分、自分の理想と違うことが起きると、動揺することはあるかもしれないですね。
――推しと自分は対等、たしかに昨今生まれた価値観かもしれません。とはいえ、ちゅーたんはLIP×LIPの2人と同じ学校に通うクラスメイトなのに、そのあたりは絶対的に一線を引いていてすごいなと思います。従来の少女漫画だと、「クラスメイトのアイドルとこっそり恋愛関係に!?」といった展開になりそうですが、そうではないんですよね。
ヤマコ ちゅーたんは性格がいい子ではないのですが、自分なりのルールがすごくあるんですよね。たとえば『同担☆拒否』(2024年2月配信)のMVにもありますが、学校でのプライベートな様子を「学校でこんなことしてる!」とSNSに投稿しているアカウントに対して、めっちゃ怒るんです。ちゅーたんが彼らについてつぶやくのは、アイドル面だけ。ちゅーたんは“いい主人公”じゃないけど、そういう自分ルールにのっとったポリシーを持っているんですよね。
島陰 そういう完璧ではないところが、リアリティがあり、人間らしくていいですよね。ちゅーたんの魅力のひとつです。
■完結した『可愛くてごめん』はAmazonでチェック!



