■ハニワが大事にした「ひねくれていて裏表もある主人公」
――今作は『可愛くてごめん』のタイトルどおり同名楽曲を元にしていますが、ほかにも『ヒロインたるもの!』『東京サニーパーティー』『すきっちゅーの!』『可愛くなれたらいいのに』『ディア♡マイフレンド』『同担☆拒否』……など多くの楽曲にちゅーたんが登場しています。各曲に散りばめられたちゅーたんを、どんなふうにピックアップして漫画に落とし込んだのでしょう。
島陰 「このシーンを見せたいな」と考えながら、繋いで繋いでどうするか……という作業なんですが、実はMVには描かれていないちょっとした仕草を描くことのほうが難しかったんですよ。「こういうとき、どんなふうに喜ぶのかな」「どんなふうに落ち込むのかな」とか。読めない部分をハニワさんにチェックしていただく作業がほとんどでした。
――日常のなにげない仕草などですね。
島陰 そうですね。たとえば、メイド喫茶のお客さんたちに、ちゅーたんがアイドルユニットLIP×LIPのヲタクだとバレるシーンがあるんですが(第4話)。
――店内でファン垢のプリントアウトをお客さんの男性にばらまかれて、「男のために全財産貢ぐ 軽い女なんだよ!!」と言われてしまうシーンですね。
島陰 はい。その後のちゅーたんの反応が、私的には結構予想外だったんです。私は「あ、しまった」という気持ちになるのかなと思っていたんです。が、ふつふつとした怒りをぐっとこらえて冷静に「運命の人のために本気で働いているだけなんだけど?」と言い放つんです。それが自分の中で新しくて。「あ、怒るんだ!」って。そういうことが結構ありました。
ヤマコ 私もそのシーンはすごく印象深く覚えています。従来、島陰さんが描くキャラクターって、なんというか"光のキャラクター”という感じがして。前作の主人公・涼海ひよりは元気ハツラツなキャラクターで、それが本当に島陰さんとバチッとハマって、すごく可愛くてよかったんです。
けど、ちゅーたんはひよりと性格が真逆。ひねくれていて裏表もあるし、“いい主人公”じゃない。「性格がいいわけじゃないよね」というちゅーたんのキャラクターを、ハニワは大事にしていました。
そんなちゅーたんを、光のキャラクターをすごくキレイに描いてくださる島陰さんにどう伝えたらいいだろう、と、最初にすごくすり合わせをした記憶があります。「本当にここを描いて大丈夫ですか?」「本当にイヤなヤツに描いて大丈夫です!」みたいに。“ちょっとイヤなやつ”というキャラクターを主人公として描いていただくのは、難しかっただろうなと思います。
島陰 たしかにクセのある主人公で、加減が難しかったですね。
――では、それが固まってしまえばあとは走り出せばOK、という感じですか。
島陰 はい。途中で「これだ!」と決めた瞬間があったんです。そこからはすっと描けるようになりましたね。
――読者の方たちは、“いい主人公”ではないちゅーたんをどう捉えたのでしょう。
島陰 「イヤな子だな」と思われると思っていたら、多くの読者さんが「ちゅーたんはヲタクの鑑だ!」と言ってくださって。「ちゅーたんを目標に推し活しよう」という声も届きました。
ヤマコ いまの推し活文化って、SNSで周りの人がどういう推し活をしているのかが見えるからこそ、見比べてしまうこともありますよね。「自分と比較してあの子はグッズをたくさん買えているのにな」とか。
一方でちゅーたんは、“自分対推し”の一対一なんです。「私は楽しいんだから、周りがなにを言おうが関係ない」というスタンスで、だからヲタ友達も別に作らないよ、と。ファーストインプレッションとして、そんなふうに自我がとにかく強い部分を見せたいなと思っていました。楽曲でも最初に主張したい部分でしたね。


