■絶対的な画力が説得力を持たせる驚異のパース表現「湖川アングル」
最後は、アニメーションに実写作品以上のカメラワークを持ち込んだアニメーター・湖川友謙氏の「湖川アングル」について触れておきたい。迫力のある絵柄と圧倒的画力によって『伝説巨神イデオン』(1980年)や『聖戦士ダンバイン』(1983年)などでロボットアニメファンを魅了した人物である。
湖川氏を象徴する、キャラクターを極端なローアングルから見上げるような大胆な構図のことを「湖川アングル」や「湖川アオリ」などと呼んだ。
極端なほどパースを効かせることでキャラの顎のラインを強調、精悍さや悲壮感を際立たせる。さらに、下からのアングルのために鼻や輪郭などのラインは大胆にデフォルメされ、本来はアンバランスさを感じるはずの構図ながら、見る者に強烈なインパクトを与えたのは氏の画力があってのことだろう。
単に人物の美しさやカッコよさを強調するだけでなく、憂いを帯びた表情や意志の強さをダイレクトに感じさせる表情を表現する際にも効果的に用いられていたのが印象的だ。
時代は移り変わり、現代のアニメ制作は3DCGやデジタル撮影が主流となった。派手な映像描写や手描きでは物理的に困難な表現、演算による爆破描写など、デジタルがもたらした恩恵は計り知れない。
しかしその根底には、昭和のアニメ界を支えたクリエイターたちがセル画と情熱だけで生み出した「表現に対するこだわり」があるのは間違いないはずだ。
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