板野一郎、金田伊功、富野由悠季、湖川友謙…レジェンドクリエイターたちが生んだ昭和アニメの「神演出」 ロボアニメ史に語り継がれる「伝説の5秒」も…の画像
Blu-ray「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか 4Kリマスターセット」(バンダイナムコフィルムワークス) (C)1984 BIGWEST

 デジタル技術の進歩は、アニメーション制作にも大きな影響を与えている。昨今のアニメ作品などで、テレビアニメながら、劇場映画と見間違うような圧巻の映像表現に驚かされるのも、その影響が少なからずあるだろう。

 緻密な作画、大胆なカメラワーク、それらが融合した秀逸な演出で昨今のアニメファンの心をつかんだ作品も目立つ。

 しかし、あらゆる工程を人間の手作業で行っていたアニメ黎明期には、少しでも優れたアニメーションを実現すべく挑戦を続けてきた先人たちがいた。そして当時、実験的かつ先進的な手法を用いて、のちに自身の“代名詞”となるような表現技法を編み出したのである。

 そういった映像表現は現代のクリエイターにまで脈々と受け継がれ、今もなお我々を魅了し続けているのだ。

 そこで今回は視聴者の目を奪うアニメ演出のルーツともいえる、昭和の巨匠たちが生んだ「伝説の技法」を振り返ってみたい。


※本記事には各作品の内容を含みます。

■ミサイルが高速飛行する圧倒的な臨場感と迫力! アクロバティックな戦闘演出「板野サーカス」がもたらした衝撃

 アニメーターの板野一郎氏は『伝説巨神イデオン』や『超時空要塞マクロス』などで、スピード感あふれる独特の戦闘演出を確立。そのスピーディかつアクロバティックなメカの動きは「板野サーカス」と呼ばれた。

 中でもテレビ画面を埋め尽くすほどのミサイルが、複雑な軌跡を描いて高速で飛び交う演出は板野氏の代名詞となり、アニメファンから「ミサイルの達人」と称されたほどである。

 そんな板野氏の演出において、いまだに最高峰と語り継がれる名シーンが、劇場版『マクロスプラス MOVIE EDITION』(1995年)にある。それが「YF-21vsゴースト(X-9)」における、通称「伝説の5秒」と呼ばれる戦闘描写だ。

 次世代可変戦闘機YF-21を駆るガルド・ゴア・ボーマンに対し、暴走した無人戦闘機ゴーストが無数のミサイルを発射する。大量のミサイルが、まるで意思を持っているかのようにYF-21を追尾する光景と、凄まじいGを受けながら回避するガルドの技術をほんのわずかの映像の中で表現。

 その人智を超えるドッグファイトを捉えたカメラワークは目まぐるしく回転しながら高速戦闘を見事に演出し、すべて異なる軌道を描くミサイルの情報量に圧倒される。

 驚くべきは、これが30年も前に作られた作品である点だ。当時はまだ手描きのセル画が主流だったが、本作はいち早く「3DCG」を取り入れ、セル画と組み合わせるという革新的な試みを行っていた。

 板野氏は当時の最新技術と持ち前の職人技を融合させ、わずか5秒ほどのシーンに116枚もの原画を投入。この究極の戦闘アクションを生み出したのだ。

 『マクロスプラス』の公式サイトが「手描きアニメ最高峰のバルキリーのメカアクション」と謳った通り、スロー再生なしでは何が起こっているのか正確に分からないほどの情報量が込められていた伝説のシーン。その超絶作画と演出が30年前の作品であることに、今さらながら驚かされる。

 2023年に放送されたBS番組『X年後の関係者たち』の「マクロス」の回に出演した板野一郎氏は、ミサイルの描き分けについて言及。敵の進路を予想して先回りする「天才ミサイル」や、一度カメラの前を横切る「バカミサイル」など、それぞれのミサイルにキャラクター性を与えていたことが明かされた。

 たった数秒……そのわずかな一瞬で画面から消えるあまたのミサイルにまで命を吹き込む作業こそが、板野サーカスを不滅の「神演出」たらしめたのだろう。

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