■重力を無視した空中での“ガニ股”が最高にカッコいい「金田ポーズ」
金田伊功(よしのり)氏は、「金田ポーズ」を筆頭に数多くの独創的な演出を生み出してきた伝説のアニメーターである。その特異な感性は唯一無二で、いくつものアニメ作品のオープニング映像を手がけてきた。
そのなかでも『銀河旋風ブライガー』(1981年)のオープニングの映像は、当時多くのアニメファンをうならせた“カッコ良さ”だった。
まず、イントロのメンバー紹介パートでは、主役のブラスター・キッドが右手で拳銃を回転させながら豪快に登場。その際、銃や彼の手のほうが不自然なほど誇張されて描写され、体や顔のほう小さく描かれる、通称「金田パース」と呼ばれた極端な遠近法で表現された。これにより、映像に圧倒的な奥行きが生まれている。
さらに腰を落とし手足を不自然に曲げた、ガニ股のようなポージングは「金田ポーズ」(跳躍時は金田ジャンプとも呼ばれた)と呼ばれ、映像になるとその独特のアクションは最高にカッコいいキメポーズだった。
巨大変形ロボ・ブライガーの武器であるブライ・ソードからは、「十字」や「円」を組み合わせたような幾何学的な光の粒子が放たれて輝きを表現。これは「金田光り」とも呼ばれ、本来は硬いはずのロボットであるブライガーは人間以上に背を反らせ、大胆な「金田ポーズ」を決める。
ブライガーが発射する光線も、一般的なロボットアニメのような直線的な動きではなく、まるで蛇のようにうねり、ギザギザとした稲妻のように画面を切り裂く「金田ビーム」と呼ばれる技法で表現されていた。
このほかにも敵が大破する際、中心から四方に伸びる閃光や煙、火花、集中線、さまざまな形状が豪快に飛び散る「金田爆発」など……彼の名がついた独特の演出技法は数え上げたらキリがないほどだ。
金田氏の生み出したこれら独創的な演出は、のちのクリエイターにも大きな影響を与え、ロボットアニメだけにとどまらず、ジャンルを飛び越えて受け継がれ、今も多くのファンを魅了し続けている。
■キャラの叫びが画面を裂く! カット数削減から生まれた発明「富野カットイン」
視覚的な爽快感をもたらす金田氏の映像演出に対し、キャラクターの内面を見事かつ効果的に表現させたのが、富野由悠季氏による通称「富野カットイン」だ。
映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(1988年)などで多用され、激しいモビルスーツ戦の最中に、コックピット内にいるパイロットの姿が挿入され、その表情がマンガのコマ割りのようにカットインされる表現を指す。
もともとは「カット数を減らすための苦肉の策」として生み出された手法だったそうだが、コックピットを飛び越えてパイロットの叫びが直接届くようなアニメならではの表現に昇華された。
モビルスーツ戦の緊迫した状況と人間の生々しい感情を効率よく伝えるこの演出は、ニュータイプの共鳴や極限状態の精神状態を直感的に伝えるのに有効な、まさに画期的な発明だった。
この「富野カットイン」はガンダム作品だけでなく、さまざまなアニメや『スーパーロボット大戦』シリーズのようなゲームなどにも幅広く採用されている。


