夜ドラ『ミッドナイトタクシー』(NHK)が、面白い。前枠で放送されている『コンビニ兄弟』(NHK)を見終えたあと、そのままテレビをつけていたら、偶然に出合ったのがこの作品だった。「あっ、新しい“夜ドラ”か」とラフに見始めたはずなのに、たった1分で「なんじゃ、これぇえええ!」となった。あまりにも面白すぎる。坂元裕二脚本が好きな人は、絶対にハマる。
というのも、本作の脚本家・兵頭るり氏(2024年度向田邦子賞を史上最年少で受賞したすごいお方)は、同じく脚本家である坂元裕二の教え子らしいのだ。ドラマ『マイダイアリー』(ABCテレビ・テレビ朝日系)のときにも、「この人が書くセリフは面白いな〜」と思ったが、さらに切れ味を増している。
タイトルからも推察できるように、このドラマは真夜中のタクシー内での出来事を描いた作品だ。主人公の蘭象子(古川琴音)は、深夜勤務でタクシーのドライバーをしている29歳。なぜか象子は、30歳を迎えるまでの日数をカウントダウンしながら日々を過ごしている。
みなさんは、サターン・リターン(土星回帰)という言葉をご存知だろうか。わたしも最近知ったのだが、占星術には、生まれた時の土星の位置に、運行中の土星が戻ってくるタイミングがあるらしい。土星の公転周期は、およそ29年。そのため、人生で最初のサターン・リターンは29歳前後に訪れると言われている。象子もまさに、30歳目前、人生の転換期を迎えている──のだろうか。
現段階では明かされていないが、象子が30歳という年齢にこだわる理由がきっとあるのだろう。性格的に「年齢なんてただの数字でしょ」と冷めたことを言いそうなキャラクターなのに、誰よりもその日を意識している。そのギャップが、彼女の抱える“何か”を感じさせる。ただ乗客の物語を描くだけでなく、象子自身の人生にも少しずつスポットが当たっていくのが、本作の魅力だ。
アフリカで生まれたとか、北欧に住んだことがあるとか、自由奔放な母に捨てられた過去があるとか、引き取ってくれた母方の伯母・蘭弥生(和久井映美)が芸能事務所のマネージャーをしているとか……ゆっくり、ゆっくりと、象子という人物の輪郭が色濃くなっていく。兵頭脚本は、いつも見せすぎず隠しすぎない。この塩梅(あんばい)が絶妙なのだ。


