感情を揺さぶる“大人のエンタメ”…「プロデューサー佐野亜裕美」が手掛けた傑作ドラマ3選 『銀河の一票』も話題の画像
ドラマ『銀河の一票』メインビジュアル(C)カンテレ

 スナックのママが都知事を目指すという斬新な設定と胸を刺す人間ドラマで、今期見逃せない1作として評価を高めている『銀河の一票』(カンテレ・フジテレビ系)。政界を舞台としたこの物語を極上のエンターテインメントに仕上げているのが、プロデューサーを務める佐野亜裕美さんだ。

 佐野さんはもともとTBSのドラマプロデューサーとして頭角を現し、その後、関西テレビに移籍。これまでに確かな手腕で数々の話題作を世に送り出してきた存在だ。

 そこで今回は『銀河の一票』ファンにもきっと刺さる、佐野亜裕美プロデューサーが手がけた名作ドラマを振り返ってみたい。

※本記事には各作品の内容を含みます

■失脚したアナウンサーの戦いを描く社会派サスペンス『エルピス』

 鋭い人間観察力を活かした深みのある人間ドラマで、視聴者を惹き込んできた佐野さん。そんな佐野さんが2022年に手がけた『エルピス -希望、あるいは災い-』(カンテレ・フジテレビ系、月曜22時枠)は、数々の賞を総なめにした社会派エンターテインメントの傑作だ。

 主人公は、スキャンダルで転落したアナウンサー・浅川恵那(長澤まさみさん)。ある日、彼女のもとに、若手ディレクターの岸本拓朗(眞栄田郷敦さん)からある相談が持ち込まれる。

 それは、「かつて世間を騒がせた少女連続殺人事件で死刑判決を受けた松本良夫が冤罪かもしれない」という、あまりにも重い真相解明への協力要請だった。恵那は最初こそ難色を示していたものの、ある出来事をきっかけに調査に本格的に乗り出す。そして、保身や組織の圧力に潰されそうになりながらも、国家権力と報道の歪んだ体制そのものへ真正面から切り込んでいく。

 テレビ局の闇という重いテーマに挑んだ本作は、佐野さんが脚本家・渡辺あやさんのもとに通い詰めて企画を立て、6年もの歳月をかけて丹念に練り上げた作品だ。実在の冤罪事件をベースにした綿密な構成と渡辺さんによる骨太な物語が融合したことで、フィクションでありながら現実を突きつけられるような強烈なリアリティを生み出している。

 そこに、長澤まさみさんや眞栄田郷敦さん、鈴木亮平さんといった実力派俳優陣が加わり、生々しい人間心理の描写に深みが増している。特に、事件の真相を追う中で徐々に目の光を取り戻していく長澤さんの繊細な表現力は圧巻だ。

■“偶然”出会った4人の男女が織りなすラブ&サスペンス『カルテット』

 2017年に放送された『カルテット』(TBS系、火曜22時枠)は、ある4人の男女が織りなす大人のラブサスペンス。佐野さんがドラマ『東京ラブストーリー』や映画『怪物』など数々の名作を生み出す脚本家・坂元裕二さんと初のタッグを組んだ本作は、松たか子さんの起用を軸に、企画から放送まで実に4年もの歳月をかけて誕生した。

 松さんが演じるのは、ヴァイオリン奏者の巻真紀。ある時、真紀は満島ひかりさん演じるチェリスト&無職の世吹すずめ、高橋一生さん演じるヴィオラ奏者&美容室勤務の家森諭高、そして松田龍平さん演じるヴァイオリニスト&会社員の別府司とカラオケボックスで出会う。

 やがて4人はカルテットを結成し、軽井沢の別荘を拠点に共同生活を始める。しかし、偶然に見えた彼らの出会いには、それぞれの秘密と思惑が隠されていた。さらに、共同生活を送る中で4人の関係は少しずつ変化し、一筋縄ではいかない恋心や複雑な感情が交錯。ほろ苦くも愛おしい大人の恋愛模様が描かれていく。

 ミステリーな展開と繊細な人間ドラマに加え、4人が奏でる美しいカルテットの音色も本作の見どころの1つ。クラシック音楽が彼らの気持ちと物語を彩り、作品により深い余韻をもたらしている。

 また、作中では4人が「唐揚げにレモンをかけるか」で議論を繰り広げるシーンが登場するが、実はこのエピソードは佐野さんの実体験を脚色したものだという。脚本家との幾度にもわたる対話の中で、こういった何気ないエピソードが落とし込まれることで、物語に温かな人間味が生まれているのだ。

 佐野さんが手がけるドラマが視聴者の心を惹きつける理由も、こうした細部にわたるこだわりにあるのかもしれない。

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