■体を乗っ取る非情な復讐劇「たましいふきこみ銃」

 コミックス第34巻に収録されている「たましいふきこみ銃」は、精神的にも肉体的にも復讐に利用できるひみつ道具だ。

 ジャイアンにいじめられ、人形を作って憂さ晴らしをするのび太を見かねて、ドラえもんは「たましいふきこみ銃」を貸す。これは自分の魂を半分だけ相手に吹き込むことで、その相手の体や言葉を自分の思い通りに操ることができるというひみつ道具だ。

 のび太はこれを使って、ジャイアンの体を乗っ取ることに成功。そして、ジャイアンに土下座をさせ「ゆるしてください」と謝罪させたあげく、身動きが取れないジャイアンに対して日頃の恨みを晴らすべく仕返しをする。

 『ドラえもん』のエピソードとしては珍しく、のび太がジャイアンへの復讐を完遂するという、ある意味スッキリする展開を迎える。しかし、どれだけ恨みがたまっていたとしても、他人の体を乗っ取って意のままに操るという道具は、現実にはあってはならないだろう。

 ちなみにラストは、ジャイアンがのび太にやられる様子を見たスネ夫が「ジャイアンてこんなに弱かったのか」と勘違いして蹴ったところ、正気に戻ったジャイアンに手痛い反撃を受けるというオチだった。やはり安易な復讐や攻撃は良い結果を生まないという、作者のメッセージが込められているのだろう。

 

 人間の復讐心を満たすため、絶大な威力を発揮するであろう、これらのひみつ道具。しかし、「人を呪わば穴二つ」という言葉があるように、憎しみや恨みといった負の感情にとらわれて安易な行動をとると、とんでもない結末を招くこともある。

 『ドラえもん』では、一時の感情に任せて仕返しを考えるより、自分にとって大切な行動は何なのかを考えさせられるエピソードが多い。子どもだけでなく、大人にとっても有益な教訓を伝えてくれる名作なのである。

 

■怖〜い話が満載! 『ドラえもん ぞくぞくぶるるホラー編』をチェック

とっておきドラえもん ぞくぞくぶるるホラー編 (てんとう虫コミックス)
とっておきドラえもん ぞくぞくぶるるホラー編 (てんとう虫コミックス)
  1. 1
  2. 2
  3. 3