昭和のロボットアニメを思い返せば、『機動戦士ガンダム』(1979年)をはじめとするリアル路線の台頭により、いわゆる“勧善懲悪”作品からの脱却が進みます。それに伴って、登場人物たちの生々しい人間関係を描いた「愛憎劇」の宝庫となったのです。
壮絶な戦いの裏側で進行する“男女の想い”や“愛の試練”。それは、昭和のロボットアニメが「子どもが楽しむもの」から「大人の鑑賞にも応えられるもの」へと変化していった証ともいえるでしょう。
そういった作品の代表格でもある『超時空要塞マクロス』(1982年)では、異星人ゼントラーディとの宇宙戦争が繰り広げられる傍らで、主人公・一条輝を巡る三角関係が描かれます。人間の生々しさまで赤裸々に描いた恋愛模様は、ファンの間でもリン・ミンメイ派、早瀬未沙派に分かれて論争を繰り広げるほどでした。
そこで今回は、筆者がリアルタイムで視聴していた昭和のロボットアニメの中から、「ドロドロした恋愛模様」が印象深かった衝撃的な作品を振り返ってみたいと思います。
※本記事には各作品の内容を含みます。
■ダバを巡る女たちの執念と、支配者を巡る深い愛憎『重戦記エルガイム』
最初に取り上げるのは『重戦機エルガイム』。日本サンライズが製作し、1984年から全54話が放送されたロボットアニメです。
物語の舞台となる星系「ペンタゴナ・ワールド」は、支配者であるオルドナ・ポセイダルの圧政によって苦しめられていました。その中の惑星コアムの辺境出身である主人公ダバ・マイロードは、ポセイダル施政に不満を持つ反乱軍と合流。A級ヘビーメタル「エルガイム」を駆って、ポセイダル軍との戦いに身を投じることになります。
比較的まじめでリーダーシップもあるイケメンのダバは、実はポセイダルに滅ぼされたヤーマン族カモン王朝の王子でした。そして盗賊団にいた美少女ファンネリア・アムと、ポセイダル軍に所属していた女士官ガウ・ハ・レッシィは、そんなダバに惚れるのです。
その結果、アムは盗賊団から離れ、レッシィに至ってはポセイダル軍を抜けて反乱軍に参加し、ダバに尽くすことに。互いを「恋のライバル」として意識し、バチバチの火花を散らしました。
しかしそれ以上にドロドロした恋愛関係として、真のポセイダルと、その影武者を務めていた女性の歪んだ執着と支配関係が忘れられません。
多くの人々が周知するポセイダルは、銀の長髪に金の右目と青い左目を持つ、女性のような美貌を持つ“男性”でした。しかしこれは、本物のポセイダルが立てた影武者だったのです。
本物のポセイダルは、アマンダ商会の総帥アマンダラ・カマンダラでした。彼は恋人のミアン・クゥ・ハウ・アッシャーを自身の影武者に仕立て上げ、裏からペンタゴナワールドを支配していました。
長きに渡ってポセイダルを演じさせられ、いいように操られてきたミアン。彼女は、自分こそが本当のポセイダルと思い込むほど自我を浸食されてしまいます。
しかし最終決戦で自我を取り戻し、すべてを思い出したミアンは、アマンダラを破滅させるため、不老不死の力を得ていたバイオリレーション・システムを停止させます。その反動でミアンはアマンダラとともに一気に老化し、塵となって消えてしまいました。
かつて愛した男に裏切られ、利用され続けたミアンという女性の悲哀は、あまりにも印象的でした。
そして、忘れてはいけないのが、最終的にダバが選んだ女性、クワサン・オリビーです。彼女はダバの義妹であり許嫁でしたが、3年前にさらわれて行方不明に。
実は彼女はポセイダルの実験台にされてバイオリレーションシステムで操られ、ダバが救出した時には精神的に危険な状態でした。ところがダバは、ポセイダルを見つけるために彼女を戦場に出し、ポセイダルの死が決定打となって、ついに精神崩壊してしまいます。
オリビーが壊れてしまった直接の原因はポセイダルかもしれませんが、ダバをはじめとする男たちの身勝手なエゴに振り回されて悲劇に見舞われるという、なんとも後味の悪い“愛”の結末が描かれたのです。


