■「ゼーリエの弟子」ではなく「フランメの弟子」のままにしたかった?

 第3の説として、ゼーリエが抱く弟子への特別な想いがフリーレンを不合格にさせた可能性についても考えてみたい。

 一級魔法使いのメトーデによれば、一級魔法使いに認定された者は、基本的に全員がゼーリエの弟子になるという。ふだんは傲岸不遜な態度が目立つゼーリエだが、内心は情に厚く、弟子の面倒見はとてもいい。その愛情は、「弟子を取って後悔したことは一度も無いんだ」と言い切るほどである。

 そんなゼーリエが育てた弟子の1人に、1000年前に歴史を動かした大魔法使い・フランメがいる。彼女は人間に魔法を広めた伝説的な英雄であり、フリーレンの師匠でもある人物だ。

 ゼーリエは、“気まぐれで育てた弟子”という言い方をしていたが、彼女の意志を継いで「大陸魔法協会」を創設するなど、フランメに対しても深い愛着を抱いていたことが分かる。

 ならば、フランメの弟子であるフリーレンが一級魔法使いになり、「ゼーリエの弟子」になるとしたら、彼女はどう考えるだろうか。

 フリーレンは、今は亡きフランメの生前の姿を知る数少ない存在だ。愛弟子が生きた証そのものであるフリーレンを、自身の弟子ではなく「フランメの弟子」のままにしたかった……という解釈もできないだろうか。少々ロマンチックすぎるかもしれないが、そう考えたくなるほど、ゼーリエは弟子想いの師匠なのである。

 

 「フリーレンはなぜ一級魔法使い試験で不合格になったのか」。

 この疑問の面白いところは、当事者であるゼーリエとフリーレンが何を思っていたのか、作中でほとんど描かれていない点にある。肝心の面談では不合格を前提にしたかのような会話が淡々と進み、互いが本心を探り合うことなく、あっさり終わってしまう。

 だからこそ、読者が想像を膨らませる余地がある。一見すると淡泊なやりとりの裏には、複雑な心情が感じられた。そういった余白の部分こそが、『葬送のフリーレン』という物語の持つ大きな魅力なのだろう。

 

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葬送のフリーレン(1) (少年サンデーコミックス)
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