■テリィ派とアンソニー派に分かれた? 多彩なイケメンの存在は「推し」文化の先駆け!?
当時の多くの少女を魅了した大きな要因として、キャンディを囲む魅力的な男性キャラクターたちの存在は欠かせません。性格も背景も異なる色とりどりの“イケメン”たちがキャンディの周囲に現れる展開は、現代でいう乙女ゲームのルーツのようにも見えます。
ひまわりのような笑顔を持つ心優しい「アンソニー・ブラウン」は、女子の理想を体現したかのような王子様。キャンディにとって最初の愛しい相手であり、彼がバラの品種に「スイートキャンディ」と名付けたエピソードに、胸をときめかせたファンもたくさんいたはずです。
一方、不良っぽさと孤独を抱えた「テリィ(テリュース・G・グランチェスター)」は、情熱的で危うい魅力の持ち主。自分をかばって右足を失った役者のスザナに報いるため、キャンディと涙ながらに別れるシーンは、今も忘れられない屈指の名場面です。
当時のファンは、優雅な「アンソニー派」とワイルドな「テリィ派」に分かれ、どちらが素晴らしいか、真剣に議論を交わしたものです。
さらに、キャンディを支え続ける男友だちとして、発明好きでユーモアあふれる美形の眼鏡男子「ステア(アリステア・コーンウェル・アードレー)」や、おしゃれでセンス抜群のイケメン「アーチー(アーチーボルト・コーンウェス・アードレー)」も登場。彼らとの友情も、物語に彩りを添えました。
そして忘れてはいけないのが、幼い頃のキャンディの憧れの存在だった「丘の上の王子さま」。その正体は、キャンディのことを影から見守ってくれていたアルバートであり、サングラスを外せば彼もかなりのイケメンです。
このように、当時の少女漫画としては珍しく単一のヒーローではなく、読者が自分の「推し」を見つけられるほど、多彩で魅力的な男性キャラの活躍が描かれていたのです。
■試練を乗り越えて自立…少女が手にした幸福の顛末
キャンディは、物語を通してさまざまな過酷な試練に直面し、そのたびに苦しむことになりますが、彼女はけっして立ち止まることはしませんでした。
誰かを頼って守られる道を選ばず、自らの足で立つために看護師としての道を歩むのです。戦禍という厳しい時代背景の中、天涯孤独だった彼女が仕事を通じて自分の居場所――社会的役割を見出していく姿は、現代にも通じる「自立した強い女性像」といえるでしょう。
そして物語のクライマックスで、本作の最大の謎であった「丘の上の王子さま」の正体が、ずっと影から見守ってくれていたアルバートさん(ウイリアム大おじさま)であることが判明。アンソニーが丘の上の王子さまに似ていたのも、血のつながりがあったためであり、すべてが一本の線でつながる見事な伏線回収でした。
最終的に、キャンディは特定の誰かと結ばれるというハッピーエンドではなく、自分の人生を肯定し、大切な人々との絆に包まれ、ポニーの丘で未来を見つめるというかたちで物語を閉じました。
そんなキャンディが教えてくれたのは、恋愛のときめきや悲恋の涙だけでなく、どんな逆境においても自分の力で輝きに変えるという、前向きな姿勢と諦めない強さでした。
連載終了から47年が経過し、当時愛読していたファンも大人になりましたが、いまだにあの「おてんばな少女」のまばゆい姿が忘れられないのです。


