なぜ『キャンディ・キャンディ』は深く記憶に刻まれたのか…「おてんば少女」が私たちに教えてくれたこと【昭和オタクは燃え尽きない】の画像
『キャンディ・キャンディ(9)』(講談社)

 1970年代の序盤から中盤にかけて、少女漫画界では多くの傑作が生まれ、黄金時代を迎えました。『ベルサイユのばら』『ガラスの仮面』『はいからさんが通る』など、ドラマチックな物語と個性的なヒロインたちが当時の読者を魅了したのです。

 そんな中、爆発的なヒットを記録し、アニメ化も果たして多くの少女たちを夢中にしたのが『キャンディ・キャンディ』です。1970年代に社会現象を巻き起こし、今もなお「少女漫画の金字塔」として語り継がれる伝説的な作品です。

 原作漫画を読んだことがなくても、「そばかす」からはじまるアニメ主題歌に聞き覚えがある人も多いのではないでしょうか。

 同作は単なる「不遇な少女のサクセスストーリー」ではありません。過酷な運命に立ち向かう女性の自立、そしてさまざまなタイプの魅力的な男性キャラクターとの恋愛や悲恋が描かれ、現代エンターテインメントの礎となる要素が、ギュッと凝縮されていたのです。


※本記事には、作品の核心部分の内容も含みます。

■少女漫画の枠を超えた社会現象を巻き起こした「そばかすのヒロイン」

 原作・水木杏子さん、作画・いがらしゆみこさんによる『キャンディ・キャンディ(※正式には「・」はハートマーク)』は、1975年(昭和50年)から1979年まで、少女漫画雑誌『なかよし』(講談社)にて連載された作品です。

 20世紀初頭のアメリカとイギリスを舞台に、孤児院「ポニーの家」で育った少女キャンディ(キャンディス・ホワイト)が、苦難続きの人生を自分の力で切り拓いていく物語。

 キャンディは富豪ラガン家に引きとられますが、そこでひどいイジメに遭います。そんな彼女に優しく接してくれたのが、幼い頃に出会った「丘の上の王子さま」に似た少年、アンソニーでした。

 ラガン家でのキャンディに対するイジメは続いていましたが、アードレー家の総長である「ウィリアム大おじさま」の養女になったことで救われます。アンソニーとの仲も深まり幸せになるかと思いきや、不慮の事故によって彼は命を落としてしまいます。

 悲しみにくれるキャンディでしたが周囲のフォローもあって、少しずつ元気を取り戻し、やがてイギリスのロンドンに留学。その後も恋をしたり別れたりしながら、いつしか迫りくる戦禍の足音が……と息つく暇もない怒涛の展開が続きます。

 余談ではありますが、近年流行りの「悪役令嬢もの」の代名詞ともいえる縦ロールにイジワルなイメージがついたのは、キャンディをイジメていたラガン家の令嬢「イライザ」の髪型だったから、といわれるほどの影響力がありました。

 単行本全9巻の累計発行部数は1200万部を超え、当時の少女漫画としては異例の大ヒット。1976年から放送されたテレビアニメは、約2年半(全115話)続いて20%を超える視聴率を記録します。日本中の少女たちが夢中になり、そのアニメで『キャンディ・キャンディ』を知ったという人もたくさんいました。

 さらに、その熱狂は海を越え、フランス、イタリア、韓国、中国など世界各地で放送。多くの視聴者は、同作を日本の作品と知らずに見ていたという話があったほどです。「逆境に負けず、明るく前向きに生きる」というキャンディの姿勢は、国境を越えて愛されました。

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