■「挫折から立ち直った努力家」新条直輝
次に紹介する新条直輝(声・緑川光氏)は、加賀よりも先にアオイに所属していたレーサー。華々しい経歴を持ち、日本人レーサーとして大きな期待を背負って「サイバー」にデビューしたものの、その後の歩みは苦難の連続だった。
当初は「天才」として鳴り物入りで登場し、序盤の素人同然だったハヤトに嫌みを言う鼻持ちならない人物という印象。だが、急成長を遂げていくハヤトの台頭によって自信を失い、即戦力の加賀の加入によってBチーム(二軍)に降格させられ挫折を味わう。
そんな新条の魅力が爆発したのが、テレビアニメの第32話「第7戦 執念のゴールイン」だ。第1ヒートで最下位となり、そのイラ立ちをクルーにぶつけてしまうが、スゴウチームのメカニック・城之内みき(ミキ)から叱責を受ける。
それを機に立ち直り、本来の努力家気質を取り戻してクルーとも和解。レースに一か八かの調整で参戦し、執念の走りでトップに躍り出るが、ゴール目前でマシンが燃料切れを起こして停止してしまう。
誰もが「リタイア」だと思ったその時、新条はマシンを降り、自らの手でマシンを押してゴールを目指した。後続に次々と追い抜かれても諦めることなく、5位をもぎ取った彼に、観衆は惜しみない拍手を送る。この時の新条が見せた、泥臭く必死な姿にテレビの前で涙した視聴者は多いのではないだろうか。
実はその後のOVAでも、新条にはさまざまな苦難や不遇が襲う。『ZERO』ではマシントラブルに苦しみ、『SAGA』では新オーナー・名雲から解雇通告を受けた。
しかし精神的に強くなった新条は、どれほど苦しい状況にあっても、公私ともにパートナーとなったミキとの強い絆もあって乗り越えていく。そんな新条とミキの姿は「理想のカップル」としてファンからも支持を集めた。
筆者がもっともしびれたのが、葵今日子に伝えた「はっていた赤ん坊も、いつかは自分の足で歩きますよ」という決別と自立を宣言するシーンだ。かつて天才ともてはやされた男が何度もどん底を味わいながら、不屈の精神で立ち上がる姿は、女性ファンを大いに魅了した。
■顔を隠した「謎多きレーサー」ナイト・シューマッハ
最後に紹介したいのが、テレビシリーズではイギリスの「ユニオンセイバー」に所属した謎多きレーサーのナイト・シューマッハ(声・速水奨氏)だ。その正体は、ハヤトが所属するスゴウのオーナー代理・菅生あすかの兄であり、かつてF1で大活躍していた菅生修である。
当初は風見広之(ハヤトの父)が命を失う要因となったスミスの狙いを阻止するため、ナイト・シューマッハとしてサイバーに参戦。アスラーダのサイバーシステムを狙う悪人の野望が潰えるとF1界に戻った。
その後、OVAの『11(ダブルワン)』で、事故の後遺症で視神経に異常をきたしていることが判明すると、再びサイバーフォーミュラに舞い戻る。全ドライバーに宣戦布告し、あえてヒール役を演じるが、すべてはレーサーとしてのハヤトの成長をうながすための行動だった。
自ら悪役になり、己の視力を犠牲にしてまで高い壁として立ちはだかり、ハヤトにレースの厳しさを教えようとする「優しさ」は、大人の男性の包容力そのものだ。
『11』の最終話では、彼の視力は限界を迎えてリタイアを決意するが、かつて自らが告げた「レーサーがマシンを止めるのはチェッカーを受けた後だ!」というセリフをハヤトから返されるシーンは最高にアツい。
そして修は、サイバーシステムの音声ナビゲートを頼りにレースを続行。経験と音声ガイドだけを頼りに最後までトップ争いを繰り広げ、まさに「超音速の騎士」の異名にふさわしい姿を示した。
引退後はスゴウチームの監督として再出発し、後に大手術を経てテストドライバーができるまで視力は回復。穏やかな素顔に隠された熱い思いと、恋人・クレア・フォートランの尻に敷かれる意外な姿に魅了されたファンは多いはずだ。
『サイバーフォーミュラ』の登場キャラクターたちは、単にイケメンであるというだけではなく、それぞれ「挫折」「執念」「使命感」といった宿命を背負って走っているのが心に刺さる。
今回触れたキャラ以外にも魅力的なレーサーは多く、わがままな面もあったが内面は紳士なカール・リヒター・フォン・ランドル、漫才コンビのような掛け合いが魅力のジャッキー・グーデリアン&フランツ・ハイネル、武骨ながら義理堅いベテランレーサーのエデリー・ブーツホルツなど、一癖も二癖もある魅力的な男たちが大勢登場する。
今年で35周年を迎えた『サイバーフォーミュラ』における、皆さんの推しキャラは誰だっただろうか。
■この機会に過去のシリーズをチェック



