■母に単行本を渡すこと、書き続けること

 トークの後半では、花園さんが自身の母にペンネームを伝えていないことについて話が及んだ。

燃え殻「お母さんには、ペンネームを言っていないんですよね? 漫画家になることは伝えたけど、反対されたと」

花園「僕がジャンプみたいな漫画を描いていたら親に見せられたんですけど。あんまり両親から肯定されたことがないので、自分が一生懸命やったものを、ちゃんと否定されたら怖いから言えないんです」

燃え殻「そうなんだ。僕の母は今年の1月に亡くなったんですが、母は何よりも“普通”を大事にする人で、大学に行かず、テレビ美術制作の仕事に就いた自分を強く心配していたんですよね」

花園「なるほど」

燃え殻「母からすると、成功するか失敗するかは問わず、僕がこの仕事についていること自体が不安だった。だからずっと母に“大丈夫です”というプレゼンをしていた感じがしています。だから花園さんのお母さんからしたら、自分の仕事を見せることで安心感を与えるのがいいんじゃないかな。否定されるかもしれないけど、思っていたリアクションとは違うリアクションが返ってくるかもしれない」

花園「今日は実家に帰って単行本を渡したいと思います」

■書き続けるために、燃え殻さんが10年続けていること

 その後の質疑応答では、花園さんから燃え殻さんへ“創作を続ける習慣”についての質問もあった。

花園「僕からも質問良いですか? 毎日何かを書くうえで、気が乗らない日ってあると思うんです。燃え殻さんはそういう日をどう減らしているのか、聞きたいです」

燃え殻「僕は毎朝、およそ1200字を書くことを10年ほど続けています。原稿用紙でいうと3枚分かな? たまに気が乗った時に書いて商売になればいいけど、そういう人とは僕は違う。“お前はアウトプットする人間だよ”と自分に言い聞かせるために、とにかく1200字まで文字を打ち込むんです」

花園「僕も漫画家を目指すのが遅かったので、絵に対してのコンプレックスがあるんです。だから、1日1回でも絵を描いていないと不安になるので、その気持ちはすごく共感できます」

燃え殻「この商売に就いた以上、アウトプットに慣れるということなんですよね。今まで全然脈絡のない仕事をしてきましたけど、たどってみると商売の原則みたいなものは全部一緒だった気がしていて」

花園「はい、めっちゃわかります」

燃え殻「モノ書きだからって挨拶しなくていいとか、納期を守らなくていいとか、そんなことはないじゃないですか。自分は特殊な仕事をしているんだ……って思いすぎると力んでしまう。だから、書くことを日常にしていくことが大事なんじゃないかな」

 テレビ制作だけでなく、ホテルの清掃やエクレア工場の仕事など、異色のキャリアを経てきた燃え殻さんならではの考えに、来場者や花園さんもうなずきながら耳を傾けていた。

 

 なお、このトークショーのアーカイブは5月13日まで、以下のサイトで購入することができる。(購入後2週間視聴可能)。

https://premier.twitcasting.tv/plusonewest/shopcart/420989

<プロフィール>
花園照輝(はなぞの・てるき)
兵庫県出身。「COMIC MeDu」「漫画選集ザジ」にて読切掲載中。「webアクション」連載作品『悲しいことなんかじゃない』が2025年12月25日に発売。自身初の単行本となる。2026年5月には特別読切『二月のチューニング』をリリース。

燃え殻(もえがら)
1973年神奈川県横浜市生まれ。2017年、『ボクたちはみんな大人になれなかった』で小説家デビューし、同作がNetflixで映画化。エッセイ集『すべて忘れてしまうから』はDisney+とテレビ東京でドラマ化され、ほかにも映像化、舞台化多数。著書に、小説『これはただの夏』『湯布院奇行』、エッセイ集『明けないで夜』『この味もまたいつか恋しくなる』など多数。

 

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悲しいことなんかじゃない
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