2026年4月29日、大阪・ロフトプラスワンウエストで、漫画『悲しいことなんかじゃない』の刊行記念トークショー&サイン会が開催された。登壇したのは、同作の作者である花園照輝さんと、作家・エッセイストの燃え殻さんだ。
『悲しいことなんかじゃない』は、「フツウの恋」を求める女の子・アサヒと、彼女を取り巻く若者たちの関係を描いた作品。燃え殻さんが花園さんの漫画を早くから評価し、自身のエッセイ集『明けないで夜』の一篇を花園さんがコミカライズしたことから、二人の交流は始まったという。
■『悲しいことなんかじゃない』に感じた、岡崎京子と安達哲の気配
ふたりの年齢差は25歳という今回のトークショー。冒頭、燃え殻さんは前日に大阪で食事をした際、花園さんがカニしゃぶを喜んで食べていたエピソードを披露。会場を和ませながら、話題は自然と『悲しいことなんかじゃない』の作品評へと移っていった。
燃え殻さん(以下、燃え殻)「花園さんの漫画を読んだときに、岡崎京子とか、安達哲に似たものを感じたんですよね」
花園照輝さん(以下、花園)「はい、似ていると思います(笑)」
燃え殻「20代だと岡崎京子さんの作品を手に取る機会って、あまり多くないと思うんですが、きっかけはなんでしたか?」
花園「当時付き合っていた彼女が『リバーズ・エッジ』(※)を持っていて、それを読んでいました。岡崎さんの作品は“女性のことをちゃんと書いている”感じがしたというか」
燃え殻「そのときにピンと来たんですか」
花園「『リバーズ・エッジ』は、その時はそこまでピンときませんでした。その子の家にあった『pink』(※)を読んで、すごくハマったんです」
※リバーズ・エッジ:雑誌「CUTiE」で1993~94年にかけて連載された岡崎京子さんの代表作。若者たちの欲望と孤独、生きることにもがく姿を鮮烈に描き出し、青春漫画の金字塔として世代を超えて熱狂的な支持を集める。
※pink:1989年より「Newパンチザウルス」に連載された岡崎京子さんの漫画。「愛と資本主義」をテーマにリアルな性描写を交えつつ、お金や本当の愛といった真実を乾いたセリフと人物描写で表現している。
岡崎京子さんや安達哲さんからの影響を絵柄などから感じつつ、燃え殻さんは『悲しいことなんかじゃない』の読後感について、さらに言葉を重ねた。
燃え殻「影響を受けている部分は垣間見えるんですけど、それを超えて、だんだん物語のほうに目がいって、思っていたものと違うところに連れていかれるんです。僕らの世代や、僕らが尊敬していた作家の人たちとはまた違う、今の感性で書かれた爽やかさがある。未練というより、未来みたいなもののほうが濃くて、今しか書けないものを書いているというか……。無垢だけどすごくテクニカルで、青春時代に青春の漫画を書いている人だと思いました」
花園「ありがとうございます」
燃え殻「創作するときに意識していることはあったんですか?」
花園「たくさんの人に分かってもらうというより、読んでいる人が“自分のことじゃん”と思うような。ニッチであればあるほど、その人に響くかなと思って書いています」


