『ハチミツとクローバー』に『ピーチガール』、『ひるなかの流星』も…読者の予想を鮮やかに裏切って「意外な相手」と結ばれた少女漫画の画像
講談社コミックス『ピーチガール』第1巻(講談社)

 恋愛少女漫画の多くは、「最初に出会った運命の人」や「初恋の相手」と結ばれるハッピーエンドが王道である。しかし、長い歴史の中では、そんな読者の予想を鮮やかに裏切り、「えっ、そっちとくっつくの!?」と思わず叫んでしまうような衝撃展開が描かれた作品も存在するのだ。

 今回は、ヒロインが当初の予想とは違う人物を最終的なパートナーに選んだ名作を振り返りたい。初恋の呪縛から解き放たれ、自らの手で本当の幸せをつかみ取ったヒロインたちの決断を見ていこう。

 

※本記事には作品の核心部分の内容を含みます。

 

■読者も驚愕! はぐみが選んだ意外な相手『ハチミツとクローバー』

 羽海野チカさんによる『ハチミツとクローバー』は、2000年から2006年にかけて『CUTiE Comic』(宝島社)や『ヤングユー』『コーラス』(集英社)にて連載された青春群像劇である。テレビアニメ化や実写映画化、さらにはドラマ化もされ、一大ブームを巻き起こした。

 本作は美大生である竹本祐太、森田忍、真山巧らが住むボロアパートでの日常に、大学教師・花本修司(花本先生)の親戚であり、天才的な絵の才能を持つ少女・花本はぐみが現れるところから物語は始まる。

 はぐみに一目惚れした不器用な竹本と、エキセントリックだが彼女の才能を誰よりも理解する天才・森田。読者は「竹本派か、森田派か」でヤキモキしながら、登場人物が“全員片想い”という切ない恋の行方を固唾をのんで見守った。

 しかし、最終的にはぐみが選んだのは、そのどちらでもなく、長年彼女の保護者的存在であった花本先生(修ちゃん)だった。

 事故による手のケガで、絵が描けなくなるかもしれない危機に直面したはぐみ。彼女は同年代との甘酸っぱい青春の恋ではなく、自身のすべてである“描くこと”をともに背負い、人生を添い遂げてくれる伴侶として花本先生を選んだのだ。

 病室での「修ちゃんの人生を私にください」という、はぐみからの逆プロポーズに、思わず「ウソでしょ!?」と叫んだ読者も少なくなかっただろう。

 この結末は一見すると唐突に思えるかもしれない。しかし、本作をあらためて読み返してみると、はぐみと修ちゃんとの間には恋愛という枠を超え、互いの人生と芸術を丸ごと支え合う強固な関係が築かれていたことが分かる。結局のところ、深すぎる2人の関係の前には、竹本も森田も太刀打ちできなかったといえるだろう。

■一途な想いか、傍らにいる優しさか?『ピーチガール』

 上田美和さんによる『ピーチガール』は、『別冊フレンド』(講談社)で1997年から2003年にかけて連載されたメガヒット作品である。

 主人公の安達ももは、元水泳部で色黒・赤髪という派手な見た目から、周囲に“遊んでいる”と誤解されがちな女子高生だ。彼女は中学時代から、真面目で硬派な同級生・東寺ヶ森一矢(とーじ)に一途な片想いをしていた。

 念願かなって、とーじと両想いになるももだったが、最強の小悪魔女子・柏木沙絵(さえ)の卑劣な妨害工作により、誤解とすれ違いの末に破局してしまう。そんな絶望の淵にいたももを何度も救い出してくれたのが、当初は“チャラ男”に見えた学校一のモテ男・岡安浬(カイリ)であった。

 本作が衝撃的だったのは、少女漫画の王道である「障害を乗り越えて最初の本命(とーじ)と結ばれる」という展開をくつがえし、ももが最終的に自分を心から笑顔にしてくれたカイリを選んだことにある。

 連載当時、とーじとカイリの間で揺れるももの姿や、さえの執拗な嫌がらせに、多くの読者がハラハラさせられた。しかし最終話では、かつて海でカイリを救出した時の思い出を再現するかのような展開が描かれ、カイリに対し、ももが「大好きだよ 岡安」と告げ、2人は熱いキスをして結ばれる。

 終盤になって、長年の想い人であったももにフラれてしまうとーじを不憫に思う声も少なくない。しかし、最もツライ時期に寄り添い、ずっとそばで支え続けてくれた相手を選んだももの決断は、非常にリアルにも思える。

 ジェットコースターのような展開の末にたどり着いた、極上のハッピーエンドといえるだろう。

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