■アッシュが迎えた美しくも残酷すぎる結末『BANANA FISH』
吉田秋生さんによる『BANANA FISH』は、1985年から1994年まで『別冊少女コミック(現:ベツコミ)』(小学館)で連載されたバイオレンスサスペンスである。
本作は1980年代のニューヨークを舞台に、ストリートキッズのボスであるアッシュ・リンクスと、カメラマン助手としてやってきた日本人の少年・奥村英二が、謎の薬物「バナナフィッシュ」を巡る巨大な陰謀に巻き込まれていく物語だ。少女漫画の枠を超え、マフィアとの抗争や激しいアクションが展開されるハードボイルドな作風で、多くの読者を夢中にさせた。
何度も九死に一生を得て、自分を搾取し続けた者たちへの復讐を遂げたアッシュ。すべての抗争が終わったのち、彼は日本へ帰る英二から「ぼくの魂はいつも君とともにある」と綴られた手紙と航空券を受け取る。
しかし、その手紙を読みながら無防備になっていたアッシュは、報復を企てる人物の刃に倒れてしまうのだ。その後、彼は図書館に向かい、英二の手紙の上で安らかなほほ笑みを浮かべて永遠の眠りにつく。ようやく訪れるはずだった平穏を目前にしながらのこの結末は、当時の読者に大きな衝撃を与えた。
最後まで暴力の世界から抜け出せなかったアッシュは、英二の無償の愛に触れることでようやく救済されたと解釈することもできるだろう。アッシュ推しのファンにとっては悲しすぎる結末であったが、本作は少女漫画史において最も美しく、そして残酷なラストシーンとして語り継がれている。
今回紹介した作品は、主人公が愛する人と結ばれて幸せになるという王道ルートではなく、読者に大きな衝撃を与える悲劇的なラストを迎えた作品だ。
残酷な運命に翻弄され、愛する人との別れや自身の死という結末を迎えた主人公たちだが、救いのない結末だからこそリアリティがあり、読者の心に深く刻まれる魅力的な作品となったのかもしれない。
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