少女漫画と聞けば、主人公とその想い人が数々の困難を乗り越えて結ばれ、幸せなハッピーエンドを迎えるイメージがあるだろう。しかし人気作品の中には、そんな読者の期待を真っ向から裏切り、最終的に主人公が命を落とすといった容赦なき「バッドエンド」で幕を閉じる物語もあるのだ。
今回は思い出しても心がえぐられるような、衝撃的な結末を描いた名作少女漫画を紹介したい。最後が悲劇的であるからこそ、私たちの心に深く刻み込まれた、美しくも残酷なドラマを振り返ってみよう。
※本記事には各作品の核心部分の内容を含みます。
■あまりに突然すぎる別れ…『南くんの恋人』が描いた衝撃のラストシーン
内田春菊さんによる『南くんの恋人』は、1986年から87年にかけて『月刊漫画ガロ』(青林堂)にて連載された作品だ。
ごく平凡な男子高校生である南浩之と、ある日突然身長が15cmほどの手のひらサイズに縮んでしまった恋人・堀切ちよみとの秘密の同棲生活を描いている。
本作は過去に何度も実写ドラマ化された名作であり、1994年には武田真治さんと高橋由美子さん、2004年には二宮和也さんと深田恭子さんがそれぞれ主演を務めており、明るいファンタジーラブコメのイメージを持つ人も少なくない。
しかし、原作漫画はまったく異なるシビアな作品だ。小さくなったちよみの服や食事、排泄の世話といった南の現実的な負担や、恋人として対等な関係が崩れていく思春期ならではの生々しい葛藤が描かれている。
そして何より衝撃的なのが、その結末だ。2人が温泉旅行に出かけた帰り道に交通事故に遭い、車外に放り出されたちよみはあっけなく命を落としてしまうのである。
このラストについて作者の内田さんは、「人や動物は年を取るのが自然であり、あれほど小さな人が長生きするのはおかしい、死ぬことが自然な流れだった」と語っている。
本作はあまりに残酷なバッドエンドを迎えるが、ファンタジー設定の裏に隠された小さく非力な存在が生きていくことの難しさをリアルに描いた作品だ。
■運命に翻弄され続けた果てに…『砂の城』の過酷すぎる愛の結末
一条ゆかりさんによる『砂の城』は、1977年から『りぼん』(集英社)で連載された作品。当時の少女漫画としては異例ともいえる激しい愛憎劇と過酷な運命を描き、多くの読者の心をつかんだ名作だ。
物語は、裕福な家庭の令嬢、ナタリー・ロームと、孤児として育ったフランシス・ドベルジュの身分違いの恋から始まる。序盤から2人の駆け落ちや心中未遂、そして離れ離れになるというハードな展開が続く。数年後、やっと2人は再会を果たすが、フランシスは記憶を失っていた。そして、ようやくナタリーを思い出した直後、交通事故で命を落としてしまうのだ。
多くの少女漫画であればここで物語は終わるかもしれないが、本作は違う。残されたナタリーは、彼の忘れ形見である息子に「フランシス」と名付けて育てる。やがて成長した息子とナタリーは愛し合うようになるが、今度は彼女が記憶喪失に陥ってしまうのだ。
フランシスの懸命な看病で一時は記憶を取り戻すも、過酷な運命に疲れ果てた彼女はフランシスの腕の中で静かに息を引き取るのであった。
『砂の城』はヒロインだけでなく、メインの登場人物のほとんどに次々と試練が訪れる物語だ。世代を超えて受け継がれる悲哀と愛の描写は、発売から時を経た今もなお、まったく色あせることがない。


