■寄り添うことしかできなかった兄弟愛…ファルコとコルト

 最後に触れるのは、弟ファルコと兄コルトのグライス兄弟だ。ファルコとコルトの関係には、他の兄弟のような確執も誤解もない。あるのは、理不尽な世界の中で、ただ寄り添うことしかできなかった「最も純粋で、最も無力な愛情」だろう。

 コルトは戦士となることで一族を支え、弟に“巨人継承による短命な運命”を背負わせまいと願っていた。ファルコもまた、そんな兄の背中を追い続けていた。

 ファルコがパラディ島へ連行された際、コルトは大義のためではなく、ただ弟を取り戻したいという思いで行動した。そこにあったのは「生きていてほしい」という、個人的で切実な願いにほかならない。

 物語終盤、ジークの“叫び”を止められず、ファルコの巨人化が避けられなくなった瞬間、コルトが取った行動はあまりにもシンプルだった。逃げるでもなく、抗うでもなく、ただ震える弟を「大丈夫だファルコ!! 兄ちゃんがずっと付いてるからな!!」と強く抱きしめ、その最期に付き添うことを選んだのである。

 巨人化の爆炎に焼かれて命を落とすコルト。彼の死は戦況を変えたわけでもない。それでも、弟が人から怪物へと変わる直前まで触れていた兄の腕の温もりは、この過酷な物語の中で大きな意味があったように思う。それは、絶望に満ちた『進撃の巨人』の世界において、数少ない“救い”と呼べる兄弟愛の形だった。

 

 3組の兄弟を振り返ると、その関係は実に対照的だ。分かり合えなかったエレンとジーク、死を経て思いが届いたポルコとマルセル、そして最期まで寄り添い続けたファルコとコルト。

 『進撃の巨人』が描いた兄弟愛は、決してきれいなものばかりではない。すれ違い、嘘、そして逃れようのない運命である。

 それでも彼らは最後の瞬間まで、「相手のために何をするか」を選び続けた。その姿があまりにも人間らしく、だからこそ強く心に残るのである。この物語の裏側にあったのは、そんな兄弟たちのドラマだったのかもしれない。

 

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