■「他人」という、違う国の人とどう触れ合う? 第1位は『違国日記』
わたくし田口が2026年冬アニメで第1位に選び、「あー皆にも見てほしー!!」 と思わされたのが、ヤマシタトモコさん原作の『違国日記』。2024年に新垣結衣さん、早瀬憩さんキャストで実写映画化もされていた作品です。
何といってもこの作品は、感情を“急がない”ところがいい。
物語は、交通事故で両親を失った主人公の朝が、母の妹である槙生と生活を一緒にするところから始まります。それで、両親の葬儀の場面で、親族間で「誰が朝を引き取るの?」という嫌な空気が立ち込めるんですよ。
そんな雰囲気の中、槙生が「15歳の子どもはこんな醜悪な場にふさわしくない。もっと美しいものを受けるに値する」と朝に伝えて、半ば衝動的に彼女を引き取ることになります。
“両親の死”ってものすごく悲しい出来事ですが、その事実を過剰にセンセーショナルに見せるのではなく、喪失を受け止めきれない時間そのものを丁寧に描いているところがグッとくる。電話1本で「あなたのご両親が交通事故で亡くなりました」と突然言われたとして、認識はできても、すぐに理解はできないじゃないですか。そういう気持ちが整理されるまでの遠さとか、「まだわからない」という状態のまま立ち止まる感じとかを数話かけてゆっくり見せてくれる。いまはテンポの速い作品が多いけれど、そういった作品群の中でこの“急がなさ”はすごく貴重だと思いました。
キャストの演技の自然さもとにかく素晴らしい。とくに槙生役の沢城みゆきさんの芝居が、いわゆる“アニメ的な誇張”ではなくて、生活に溶け込んでいるくらい自然に響くこと。
槙生って、人としては普通じゃないというか、日常生活も破綻していて不器用な人物なんですよ。でも、それを面白おかしくは描かない。他人には他人の普通があって、槙生にも槙生の普通があり、槙生は周りからの押し付けに対し、ピシャリと言葉を発する。沢城みゆきさんの演技も相まって、ハッとさせられます。
また、朝を演じる新人の森風子さんの演技も、登場人物の年齢や揺らぎにちゃんと重なって見えて素晴らしい。ジュブナイル期の役を演じるのにピッタリというか。いい意味で青臭い演技なんです。歌を歌うシーンなんかもリアルな緊張感が感じられて、本当にマジでよすぎる。
とくに8話で、いよいよ朝が両親の死を認識するというか、受け入れてしまうシーンがあるのですが、演出も演技も、全てが相まって本当にこう……。お願いだから鑑賞してください……。音楽などいろいろが響き合って、このアニメの“空気感”が凝縮された回になっていると思います。
爆発的というより、口コミなどでじわじわと「これは好き」と言いたくなる人が増えていく作品だと思う、というか増えろ。1クールで見られるので本当におすすめです。
【プロフィール】
田口 尚平(たぐち しょうへい)
2015年にテレビ東京にアナウンサーとして入社後、スポーツ中継やバラエティ番組を担当。2020年にテレビ東京を退職後、早稲田大学院でMBAを取得し「オタクを極める」という目標を掲げて「Gamchew」を創業。ゲーム実況をはじめ、エンタメ領域の仕事を続けながら、企業のビジネス支援活動なども行っている。元TBSアナウンサー・宇内梨沙さんとのポッドキャスト番組『うない、たぐちの「オタクというには限界です。」』も好評放送中。
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