■今までの勇者像が根底から覆されるはず! 第3位は『勇者刑に処す 懲罰勇者9004隊刑務記録』
第3位として挙げたのは、『勇者刑に処す 懲罰勇者9004隊刑務記録』。もうね、設定で優勝! 作画が優勝! キャラも優勝! 全勝優勝です。
“勇者”という単語から連想されるキラキラした概念を真正面から破壊してくる作品で、まず設定が面白い。普通なら世界を救う希望の象徴であるはずの勇者ですが、この世界では「死ぬことすら許されず、延々と戦場に投入される刑罰」を「勇者刑」と呼ぶんですよ。死よりも重い刑罰が勇者刑なんです。邪悪すぎるだろ。最高かよ。
刑に処されている勇者たちの過去も一辺倒じゃないし、善人じゃない連中がそれでも役割と矜持で戦場に出ていくっていう「友情、努力、勝利」とはめっちゃ遠いところで物語しているのも味がします。もちろん、作中では憎き巨悪がしっかり存在していて、露悪的な世界観ながら、ファンタジーの骨格を保っているのがなんとも不気味でとても良い。
加えて「勇者」「女神」「魔王」みたいなファンタジーの基本語彙をそのまま使いつつ、意味をズラしてくるのが本当にうまい。勇者の設定は説明した通りですが、例えばこの世界の「女神」は信仰の対象である前に、「太古の生体兵器」という位置づけ。また、「魔王」は単独の魔族の王というより、災害や生態系の核に近い存在なんですよ。見慣れた単語なのに、文脈が変わるだけで本当に味がする……。そういう物語を親の顔より見たはずなのに、全然違う味がするの、美味しいの。テンプレートを地獄仕様に改造してるような作品。
戦闘作画も1話時点でとんでもないものを創作していて、目が釘付けになります。主人公ザイロの武器がナイフでそれを投げて戦うんですが、爆発するエフェクトひとつとっても気合いの入り方に首が垂れます。基本的に跳躍しまくっているので、ダイナミックな戦闘が常に展開されているのもすごい。
そんで、ちゃんとキャラと熱量でも殴ってきます。サブキャラクターのひとりに「陛下」ことノルガユ・センリッジという人がいるんですが、自分を連合王国の国王だと思っている一般勇者(罪人)なんです。王室にテロを仕掛けるなど結構ヤバイやつなんですが、民を思う気持ちは本物で、狂気と誠実さが同時に成立している。
だからもうみんな大好きになるわけ。ニコ動でも彼が現れると途端に「陛下! 陛下!」と弾幕が流れます。どこかぶっ飛んでいるのに、王の器を感じて、めちゃくちゃ愛らしい。
他にも「この人、何をどう生きたらこうなったの?」という掘り下げ欲が刺激されるので、キャラの背景が気になって仕方がないという琴線設計もよく出来ています。“勇者モノはもう見飽きたな”ってオタクほど読んでほしい変化球王道ファンタジーでした。
ちなみに、作者であるロケット商会さんの別作品『勇者のクズ』も同時期に放送されていました。こちらも「勇者」の設定がまるで違って別の味がするので併せて見てほしいです。
【プロフィール】
田口 尚平(たぐち しょうへい)
2015年にテレビ東京にアナウンサーとして入社後、スポーツ中継やバラエティ番組を担当。2020年にテレビ東京を退職後、早稲田大学院でMBAを取得し「オタクを極める」という目標を掲げて「Gamchew」を創業。ゲーム実況をはじめ、エンタメ領域の仕事を続けながら、企業のビジネス支援活動なども行っている。元TBSアナウンサー・宇内梨沙さんとのポッドキャスト番組『うない、たぐちの「オタクというには限界です。」』も好評放送中。
■確かな完成度で高い評価!最新作をAmazonでチェック!



