絶対下車したくない『銀河鉄道999』人間の業が深すぎる「ブラックな惑星」 唯一の娯楽が“葬式”、金持ちの道楽のための“戦争”…の画像
『さよなら銀河鉄道999-アンドロメダ終着駅』4Kリマスター版(C)松本零士・東映アニメーション (C)東映アニメーション

 1977年に連載が開始された松本零士さんの名作『銀河鉄道999』。機械の体を手に入れるため主人公の少年・星野鉄郎と、謎の美女・メーテルが銀河超特急999号で宇宙を旅する壮大な物語である。

 彼らが停車する駅は、息をのむような美しい星ばかりではない。中には到着しただけで理不尽に命を狙われたり、恐ろしい文化が根付いていたりする星も存在する。子どもの頃はそのような星をただ怖いとしか思わなかったが、大人になった今読み返すと、人間の持つ“業”や“エゴ”が剥き出しになった社会風刺の鋭さに驚かされてしまう。

 今回はそんな999号の旅路の中で、地球人であれば絶対に降りたくないであろう「人間の業が深すぎるブラック惑星」を振り返ってみたい。

※本記事には作品の内容を含みます

 

■不老不死の退屈が行き着いた究極の娯楽!?「霧の葬送惑星」

 「霧の葬送惑星」は、永遠の命がもたらすゆえの弊害を描いたエピソードであり、極めて悪趣味な文化が横行している星が登場する。

 線香の匂いが漂うこの星の住民たちは、悲しいムードを楽しみたいがために人を殺し、葬式をあげていた。彼らにとってそれが唯一の娯楽なのである。“死”に対する意識が薄く、誰かを無理やり殺して葬式をあげることが、もはや生きる目的になっているのだ。

 それゆえに鉄郎とメーテルは到着早々、黒装束の住民たちに襲われ、生きたまま棺桶に閉じ込められてしまう。辛くも脱出した鉄郎が銃の威力を落として追っ手を気絶させると、なんと周囲の住民たちはその気絶した者たちを“死者”とみなし、生きたまま棺桶に入れ、埋葬しながら“楽しみの悲しい涙”を流すのだった。

 誰かが死ぬ悲しみをエンターテインメントとして消費するという恐ろしさ……彼らは恐らく機械化人なのだろう。死なない体を手に入れて死の恐怖から解放された結果、他者の命に対する敬意すら失ってしまったのかもしれない。人間から“死”という概念を奪うとどうなるのか、その絶望的な末路を見せつけられる後味の悪いエピソードである。

■「気に入らない」だけで通行人に殴りかかる「怒髪星」

 「怒髪星」は、旅行客にとっては理不尽極まりない星「怒髪帝国」を描いたエピソードである。

 この星に降り立った途端、鉄郎は見ず知らずの通行人から「てめーは!!」と因縁をつけられて殴られてしまう。メーテルでさえも、突然通りがかりの女性に服をよこせと言われたあげく、ナイフで襲われそうになるのだ。

 星全体が常に怒っているように赤く光り、街の至る所で一触即発の乱闘騒ぎが繰り広げられているこの「怒髪帝国」は、およそ治安という概念が存在しない暴力的な世界である。

 しかし、この星の奇妙なところは、激しい殴り合いの喧嘩をしたかと思えば、次の瞬間には“実にいい喧嘩だった”と肩を組んで笑い合い、あっさりと仲直りしてしまうところだ。

 ドロドロとした陰湿な恨みを溜め込むのではなく、感情をあけっぴろげに爆発させて陽気に仲直りする彼ら。そんなこの星の文化を「宇宙で一番楽しく明るい所みたいね」とメーテルは評するのだ。

 とはいえ、事情を知らない旅行客からすれば、降りた瞬間に一方的にボコボコにされる理不尽さはたまったものではないだろう。色々な意味で「絶対に立ち寄りたくない」ブラック惑星と言えるだろう。

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