ただのザコじゃなかった! ウイグル獄長にコウケツ、ジャッカルも…『北斗の拳』よく考えたら超有能だった「悪の功労者」たちの画像
ゼノンコミックス『北斗の拳 拳王軍ザコたちの挽歌』第1巻(コアミックス)

 1983年から『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて連載が開始された、原作・武論尊氏、作画・原哲夫氏による『北斗の拳』。本作には数多くの悪党たちが登場し、主人公・ケンシロウの怒りの鉄拳によって次々と成敗されていく。

 登場する悪党たちの多くは、その場の勢いでケンシロウに挑み、瞬殺される“ザコ”キャラクターである。だが、中にはそのようなザコを巧みに束ねてのし上がった者もいた。彼らの中には、独自の組織論や経営哲学を持ち、見方を変えれば「実は超有能だったかも?」と思える者もいるのである。

 今回は、『北斗の拳』に登場した悪党の中から、視点を変えれば世紀末の“功労者”とさえ呼べるかもしれない、優れたリーダーシップを発揮した3人をピックアップしてみたい。

 

※本記事には作品の内容を含みます。

 

■残虐だけど部下に慕われて人望はあった!?「ウイグル獄長」

 不落の監獄・カサンドラを支配するのが、ウイグル獄長である。彼は泰山流双条鞭を操り、反逆する囚人たちを容赦なく処刑する残虐非道な男だ。

 ケンシロウとの戦いでも、その巨大な体を活かした奥義「蒙古覇極道(もうこはきょくどう)」を繰り出し、圧倒的な力と残虐性を見せつけた。だが、ケンシロウの「北斗鋼裂把(ほくとこうれつは)」によって肩の筋肉を破壊され、最後は「北斗百裂拳」を浴びて巨大な墓穴へと葬り去られた。

 しかし、ここで注目したいのは、彼が倒された直後の部下たちの反応である。もし恐怖と暴力だけで支配されていたのなら、トップが倒れた瞬間に部下たちは逃げ出すか、あるいは歓喜するはずだ。ところがウイグルの部下たちは「獄長の仇!!」「生かしてここからだすな~!!」とケンシロウに襲いかかっていったのである。

 荒廃した世紀末の世界において、自らの命を投げ出してまで上司の仇を討とうとする部下がどれだけいただろうか。その事実を踏まえると、ウイグル獄長はただ力で部下を押さえつけるだけでなく、彼らにとってはカリスマ性のある尊敬できる上司だったのかもしれない。

 ウイグル獄長は拳王ラオウの配下にいる監獄の番人という立場ではあったが、実は部下から慕われる、極めて有能な中間管理職だったともいえそうだ。

■超ブラック経営だが、荒野を緑の農地に変えた実業家「コウケツ」

 物語終盤、ラオウの遺児・リュウが登場する辺境編で姿を現すコウケツは、武力ではなく純粋な知恵だけを武器に大軍閥の長にまでのし上がった異色の悪党である。

 彼はもともと拳王軍で馬の世話係をしていた戦闘力皆無の雑兵であった。かつてラオウに媚びを売ろうとして「下衆なドブネズミ」と一喝された屈辱的な過去を持つ。しかし、ラオウの死後、コウケツは豊富な食料を武器に元拳王軍の兵士やならず者たちを従え、土地を求めて集まった人々を農奴として酷使する大農場を作り上げた。

 コウケツのやり方は労働者を過労死するまで働かせた上、その死体さえも肥料にするという、まさに極悪非道な“超ブラック経営”である。しかし、暴力による略奪が当たり前だった世紀末において、大勢の人々を組織化し、荒れ地を緑豊かな農地へと復活させたその手腕は評価できる。

 人を人と見なさない手法は絶対に許されない。だが、労働の対価として食糧を手に入れるという、文明復興のシステムを構築した点は理にかなっている。食料を制する者が上に立つという原則は、いつの時代も同じといえそうだ。

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